覆水盆に返らず
「いまさら嘆いても『覆水盆に返らず』だ」などのように使う「覆水盆に返らず」という言葉。
「覆水盆に返らず」は、「覆水」と「盆」を音読み、「返らず」を訓読みで「ふくすいぼんにかえらず」と読みます。
「覆水盆に返らず」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「覆水盆に返らず」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
覆水盆に返らずの意味
「覆水盆に返らず」には次の意味があります。
・一度離縁した夫婦の仲は、元には戻らないことのたとえ。転じて、一度してしまったことは取り返しがつかないことのたとえ。(出典:故事成語を知る辞典)
「覆水盆に収め難し(ふくすいぼんにおさめがたし)」という表現もありますが、同じ意味を指します。
小説などでの具体的な使い方・例文は下記の通り。
使い方・例文
・夫婦仲が覆水盆に返らずの状態だと告げると、田中は自分の秘書にならぬかと言った。
(出典:水木楊『田中角栄 その巨善と巨悪』)
・ところで、このN回目の時点に身を置いて考えてみると、それまでの二人の囚人のすべての行動は、覆水盆に返らずで、もはや動かし難い過去の事実となってしまっている。
(出典:岩井克人『ヴェニスの商人の資本論』)
・「覆水盆に返らずというじゃありませんか」 「とにかく、大事なことは、次に何をするかということだわ」と実行派のタッペンスがつけ加えた。
(出典:クリスティ/一ノ瀬直二訳『秘密組織』)
・日本語で言うなら、〈洋菓子店 覆水盆に返らず〉といったところか。
(出典:米澤穂信『小市民シリーズ1 春期限定いちごタルト事件』)
・しかし、大抵の場合怒りをぶつけたところで覆水盆に返らず、ごみ箱に入れられてしまったピザはもう食べ物として復活は出来ないのだと、太郎は諦観しても、いた。
(出典:森永あい原作/塚本裕美子著『山田太郎ものがたり たのしいびんぼう』)
・「おあんは久七には内緒で家へ連れて行ってくれまして、そこで少々の話を致しましたが、覆水盆に返らずのたとえ通り、一度、切れてしまった縁は、どうにもおたがいの心が通い合いません」 心を残して一度「かわせみ」へ戻り、夜になって、せめて百両を渡そうと仁左衛門が一人で訪ねて行った。
(出典:平岩弓枝『御宿かわせみ 21 犬張子の謎』)
・欠けらは飛び上がってくっつきあい、新品同様になったが、マートラップ液は覆水盆に返らずだった。
(出典:ローリング『ハリー・ポッターシリーズ 5 ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(上)』)
・覆水盆に返らずだよ。
(出典:高杉良『呪縛 金融腐蝕列島II(下)』)