転失気
「転失気」などのように使う「転失気」という言葉。
「転失気」は、音読みで「てんしき」と読みます。
「転失気」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「転失気」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
転失気の意味
「転失気」には次の二つの意味があります。
1 落語。
2 屁のこと。おなら。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味や使い方については下記の通りです。
転失気の意味①「落語。」
「転失気」の一つ目の意味は「落語。」です。
古典落語の演目のひとつです。
体調のすぐれない和尚が診察に訪れた医者から「てんしき」があるかないかを聞かれる。
和尚は知ったかぶりをしてその場をごまかし、あとで小僧を呼んで近所に「てんしき」を調べに行かせる。
だれもが知ったかぶりをしたため、はっきりしたことを聞き出せない小僧は最後に医者を訪ね「てんしき(転失気)」とは屁へのことだと聞かされる。
小僧は、和尚に「てんしき」とは盃のことと偽りを伝える。
医者の往診の折、宝物の盃を見てもらおうと小僧に「てんしき」を持ってくるように命じた和尚がとんちんかんなやりとりの末、真相を知るというもの。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・矢があたってカーンと鳴ったからヤカンという名がついたと珍説明をするが、「転失気」の和尚も知ったかぶりの点ではひけをとらない。
(出典:興津要『古典落語(上)』)
・日本の放屁文芸といえば落語の『転失気』を思い出す。
(出典:阿刀田高『江戸禁断らいぶらりい』)
・ただ、「転失気」では、和尚と医者とが、おたがいに「てんしき」の意味をとりちがえて会話をかわす場面が、モノがモノだけにたいへん愛嬌になっていておかしい。
(出典:興津要『古典落語(上)』)
・落語に「転失気」という題の咄がある。
(出典:池田弥三郎『話のたね』)
・古典落語なら、しったかぶりの応酬が繰り広げられる『転失気』が面白くて私は好きです。
転失気の意味②「屁のこと。おなら。」
「転失気」の二つ目の意味は「屁のこと。おなら。」です。
①から、おなら、もしくはおならをすることという意味で使われます。
一方で、正確には、「屁(へ)が肛門まで来て、外に出ないで、音が内へ反転すること(出典:精選版 日本国語大辞)」という意味だともいわれています。
また、一般にはあまり使わない言葉であるので、芸人の間だけのいわゆる”専門用語””業界用語”とも捉えられています。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・そして、文を捧げて差し出した瞬間に、高々と一発、転失気を鳴らした。
(出典:池田弥三郎『話のたね』)
・その厳粛な席で、突如、家康公が高々と転失気を放ったのである。
(出典:池田弥三郎『話のたね』)
・それはともかく、江戸時代に書かれた『善庵随筆』なる一書によれば、転失気とおならは別のものだという。
(出典:阿刀田高『江戸禁断らいぶらりい』)
・「転失気とはなんのことか知っておるか」 縄次は「わかりません」と答えるとまた干し柿をにちゃにちゃ齧った。
(出典:町田康『パンク侍、斬られて候』)
・あれが正統の転失気。
(出典:阿刀田高『江戸禁断らいぶらりい』)