痛し痒し
「痛し痒しでそうにも立ち行かない」などのように使う「痛し痒し」という言葉。
「痛し痒し」は、訓読みで「いたしかゆし」と読みます。
「痛し痒し」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「痛し痒し」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
痛し痒しの意味
「痛し痒し」には次の意味があります。
・二つの方法のどちらをとってもぐあいが悪く、どうしたらよいか迷う。また、ぐあいのよい面もあれば悪い面もあって、困る。(出典:デジタル大辞泉)
かけば痛いし、かかないとかゆい意から生まれた言葉です。
片方を立てればもう片方が立たない、または両方を取ると具合が悪いといった、利害得失が入り混じって判断しかねる状況を意味します。
小説などでの具体的な使い方や類語は下記の通り。
使い方・例文
・結婚という制度は青年子女にとっては、痛し痒しの制度となりつつある。
(出典:戸坂潤『思想と風俗』)
・この二人の上京は、実のところ葉之助にとっては、痛し痒しというところであった。
(出典:国枝史郎『八ヶ嶽の魔神』)
・痛し痒しであるが、何としてでもこのバターを買っておきたい。
(出典:伊藤整『太平洋戦争日記(二)』)
・代理店ソニーとしては有難いがソニー本社としては痛し痒しだというのである。
(出典:五味康祐『五味康祐オーディオ遍歴』)
・しかし、実際そこで彼と暮すようになって見ると、伸子はその特典を痛し痒しに感じた。
(出典:宮本百合子『伸子』)
類語
・あちら立てればこちらが立たぬ(あちらをたてればこちらがたたぬ)
意味:一方を選ぶともう一方の立場がなくなり、両立しがたいこと。二つに一つの選択を迫られ、悩ましいときにいう。(出典:ことわざを知る辞典)
・帯に短し襷に長し(おびにみじかしたすきにながし)
意味:物事が中途はんぱで、なんの役にも立たないことのたとえ。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・前門の虎後門の狼(ぜんもんのとらこうもんのおおかみ)
意味:一つの災いを逃れても別の災いにあうたとえ。(出典:デジタル大辞泉)
・八方塞がり(はっぽうふさがり)
意味:どの方面にも差し障りがあって、手の打ちようがないこと。(出典:デジタル大辞泉)
・ジレンマ(dilemma)
意味:選ぶべき道が二つあってそのどちらもが、望ましくない結果をもたらすという状態。八方ふさがり。(出典:精選版 日本国語大辞典)