達者
「口が達者」などのように使う「達者」という言葉。
「達者」は、音読みで「たっしゃ」と読みます。
「達者」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「達者」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
達者の意味
「達者」には次の四つの意味があります。
1 学問・技芸などの道に熟達している人。達人。
2 物事に慣れていて、巧みなさま。
3 からだが丈夫で健康なさま。
4 うまく立ちまわって抜け目のないさま。したたかであるさま。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
達者の意味①「学問・技芸などの道に熟達している人。達人。」
「達者」の一つ目の意味は「学問・技芸などの道に熟達している人。達人。」です。
この場合は名詞で、何かしらの知識や技能に優れている人のことを意味します。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・太政大臣という音楽の達者が臨場していることにだれもだれも興奮しているのである。
(出典:与謝野晶子『源氏物語』)
・源八が生きてあったころの松江藩には、弓術の達者が大量に増えたということだ。
(出典:池波正太郎『剣客群像』)
・肩つぎなしに江戸まで通しの利きそうな、雲助の達者を探し集めに。
(出典:吉川英治『鳴門秘帖』)
類語
・名人(めいじん)
意味:技芸にすぐれている人。また、その分野で評判の高い人。(出典:デジタル大辞泉)
・達人(たつじん)
意味:技芸・学問の奥義に達している人。達者。(出典:デジタル大辞泉)
・名手(めいしゅ)
意味:すぐれた技量をもつ人。名人。(出典:デジタル大辞泉)
達者の意味②「物事に慣れていて、巧みなさま。」
「達者」の二つ目の意味は「物事に慣れていて、巧みなさま。」です。
こちらは形容動詞で、経験や知識から物事に慣れていて、熟達している様を表します。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・口の達者な彼女は、公子と親しくなったのは離婚後だと主張しかねない。
(出典:東野圭吾『殺人の門』)
・私を担当したのは朝鮮系のソ連人で軍服は着ておらず日本語が達者だった。
(出典:御田重宝『シベリア抑留』)
・素性法師の一首とともに録されているが、業平の作品の方が達者である。
(出典:久保田正文『百人一首の世界』)
類語
・熟練(じゅくれん)
意味:物事によくなれて、巧みなさま。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・老練(ろうれん)
意味:多く経験を積んで、物事に慣れ、巧みであること。また、そのさま。(出典:デジタル大辞泉)
・習熟(しゅうじゅく)
意味:そのことに十分に慣れ、じょうずになること。(出典:デジタル大辞泉)
達者の意味③「からだが丈夫で健康なさま。」
「達者」の三つ目の意味は「からだが丈夫で健康なさま。」です。
こちらも形容動詞で、言い換えると、病気などもせず身体が強く健やかである様を意味しています。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・達者で居たら今日あたりはきっと団子坂へでも行っているだろうと思う。
(出典:寺田寅彦『障子の落書』)
・そればかりか、達者で暮らせなどと心にもないことを口にしたのである。
(出典:笹沢左保『雪に花散る奥州路』)
・お父さまはどうぞお身体を大切にして、達者にお暮らしくださいませ。
(出典:佐左木俊郎『錯覚の拷問室』)
類語
・健やか(すこやか)
意味:からだが丈夫で元気なさま。心身が健全であるさま。(出典:デジタル大辞泉)
・強健(きょうけん)
意味:からだが強くて丈夫であること。また、そのさま。(出典:デジタル大辞泉)
・息災(そくさい)
意味:病気をしないで、元気なこと。また、そのさま。(出典:デジタル大辞泉)
達者の意味④「うまく立ちまわって抜け目のないさま。したたかであるさま。」
「達者」の四つ目の意味は「うまく立ちまわって抜け目のないさま。したたかであるさま。」です。
②の意味ととても近い形容動詞ですが、こちらは単にその技術を評する言葉ではありません。
相当の知識や技能をもっていて、且つずる賢く、自分の利益となるならばその機会を逃さない、といった巧みさを表した言葉です。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・こうして、彼は文学上の勉強をする一方、社交上にも達者な活躍をしていた。
(出典:ボッカッチョ/柏熊達生訳『デカメロン(上)』)
・それに自分も物を書くんです、いやその達者なことといったら!
(出典:ドストエフスキー/北垣信行訳『貧しき人びと』)
・浜木綿子の達者さに、やっぱり女優は気が強くなきゃいけないと思う。
(出典:永六輔『タレントその世界』)
類語
・器用(きよう)
意味:抜けめなく立ち回ること。また、そのさま。(出典:デジタル大辞泉)
・遣り手(やりて)
意味:腕前のある人。敏腕家。(出典:デジタル大辞泉)
・巧妙(こうみょう)
意味:非常に巧みであること。また、そのさま。(出典:デジタル大辞泉)