収斂
「収斂作用」などのように使う「収斂」という言葉。
「収斂」は、音読みで「しゅうれん」と読みます。
「収斂」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「収斂」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
収斂の意味
「収斂」には次の四つの意味があります。
1縮むこと。引き締まること。また、縮めること。収縮。
2一つにまとまること。また、まとめること。集約。
3租税などを取り立てること。
4 生物学で、系統の異なる生物どうしが、近似した形質をもつ方向へと進化する現象。相近。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
収斂の意味①「縮むこと。引き締まること。また、縮めること。収縮。」
「収斂」の一つ目の意味は「縮むこと。引き締まること。また、縮めること。収縮。」です。
「収」「斂」このどちらの字にも「引きしめて、集める」という意味があります。
この2つが合わさることで、よりその意味を強調しています。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・くねくねと拡散しては、また収斂する不気味な運動を繰り返している。
(出典:高千穂遙『クラッシャージョウ・シリーズ(全13巻) 3 銀河系最後の秘宝』)
・両手足がぴしっと完全な直線を作り、先端が針のように収斂する。
(出典:川原礫『アクセル・ワールド 第1巻 黒雪姫の帰還』)
・その草いきれが漂いながらも次第に収斂されると、香りの中心が緑色になってくる。
(出典:池上永一『レキオス』)
類語
・収縮(しゅうしゅく)
意味:ちぢまること。ちぢむこと。また、ちぢめること。縮収。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・緊縮(きんしゅく)
意味:引き締まること。締まりのないものを引き締めること。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・圧搾(あっさく)
意味:強く押し縮めること。また、押してしぼること。(出典:精選版 日本国語大辞典)
収斂の意味②「一つにまとまること。また、まとめること。集約。」
「収斂」の二つ目の意味は「一つにまとまること。また、まとめること。集約。」です。
意見を収斂させる、などのように、はじめはまとまりのないものを最終的に一つにまとめることをいいます。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・それはゆっくりと渦巻きながら、ひとつの形に収斂していく。
(出典:貴志祐介『黒い家』)
・そうすることで万物は神という唯一の焦点に収斂し、統一される。
(出典:古泉迦十『火蛾 (講談社ノベルス)』)
・すべては主人公に収斂し、彼にとっての他人や事物や出来事は、彼の意識の内容になる。
(出典:今村仁司『「大菩薩峠」を読む ―峠の旅人』)
類語
・収束(しゅうそく)
意味:分裂・混乱していたものが、まとまって収まりがつくこと。(出典:デジタル大辞泉)
・集束(しゅうそく)
意味:多くの光線が一点に集まること。(出典:デジタル大辞泉)
・輻輳(ふくそう)
意味:眼前の1点に両眼の視線を集中させる機能。(出典:日本大百科全書(ニッポニカ))
収斂の意味③「租税などを取り立てること。」
「収斂」の三つ目の意味は「租税などを取り立てること。」です。
聚斂(しゅうれん)とも書きます。
「聚」には「家の集まったところ」「多くのものを一所に集める」という意味があります。
集落から租税を取り立てるという意味は、ここにあります。
具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・過酷な収斂によって民は疲弊する
・強引な収斂を行うことにためらいはない
・収斂のためならば何を行ってもよい
類語
・徴税(ちょうぜい)
意味:税金をとりたてること。租税を徴収すること。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・年貢(ねんぐ)
意味:田畑の耕作者がその領主に対して生産物の一部を貢納すること。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・収税(しゅうぜい)
意味:税をとりたてること。(出典:精選版 日本国語大辞典)
収斂の意味④「生物学で、系統の異なる生物どうしが、近似した形質をもつ方向へと進化する現象。相近。」
「収斂」の四つ目の意味は「生物学で、系統の異なる生物どうしが、近似した形質をもつ方向へと進化する現象。相近。」です。
この意味では生物の進化について説明するときに使われます。
転じて、それにとどまらず、経済、政治、経済学においても用いられます。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・収斂進化は、ザンスにいるような、不自然なごたまぜの怪物は造らない。
(出典:ピアズ・アンソニイ『魔法の国ザンス1~カメレオンの呪文~』)
・けれどもわれわれは動物の場合には形態の収斂現象をよほど警戒しなければならぬ、形態の現わすところがその動物の生活内容のすべてではないのだから。
(出典:今西錦司『生物の世界』)
・鯨と魚とが同じような形を呈するのと軌を一にした、一種の収斂現象に過ぎないであろう。
(出典:今西錦司『生物の世界』)
類語
・相近(そうきん)
意味:系統の異なる生物が次第に相似的な形質を表わすように進化すること。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・収斂進化(しゅうれんしんか)
意味:魚類のサメと哺乳類のイルカのように全く系統の違う動物が、似たような体形をもつようになること。(出典:デジタル大辞泉)
・収斂の法則(しゅうれんのほうそく)
意味:異なった生物群に属している系統樹の枝は,しばしば同一の方向へと特殊化する.(出典:法則の辞典)