鳴かず飛ばず
「鳴かず飛ばずの役者」などのように使う「鳴かず飛ばず」という言葉。
「鳴かず飛ばず」は、訓読みで「なかずとばず」と読みます。
「鳴かず飛ばず」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「鳴かず飛ばず」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
鳴かず飛ばずの意味
「鳴かず飛ばず」には次の意味があります。
・将来の活躍に備えて行いを控え、機会を待っているさま。また、何の活躍もしないでいるさま。(出典:デジタル大辞泉)
「史記―楚世家」に載っている逸話が由来となっている言葉です。紀元前七世紀、春秋時代の中国でのこと。楚という国の荘王は、即位してから三年の間、まともに政務を行おうとせず、注意をする家臣は処刑すると公言していました。そこで、ある家臣が、「丘の上に鳥がおりますが、三年の間、『蜚ばず、鳴かず(飛びもしなければ鳴きもしません)』。何という鳥なのでしょう」と謎かけをしました。それを一つのきっかけにして、荘王は政務に励むようになったということです。この話の荘王は、長い間、力を貯えて将来の活躍に備えていたのですが、現在では、活躍できないようすを指して使われています。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・三度続けて文学新人賞の候補になったあと、鳴かず飛ばずであったのだ。
(出典:川上宗薫『流行作家』)
・小説の方も、ここのところ、鳴かず飛ばずという状態だったらしい。
(出典:山田正紀『神狩り』)
・その後、プロ球団に入団したものの、鳴かず飛ばずで引退している。
(出典:山本弘,友野詳,清松みゆき,西奥隆起『妖魔夜行 幻の巻』)
・結婚後のご挨拶を出す頃には、まったく鳴かず飛ばず、という状態だった。
(出典:田中康夫『昔みたい』)
・それから約十年、ヴェルヌはいくつかの戯曲や小説を書いたが、鳴かず飛ばずだった。
(出典:ヴェルヌ/金子博訳『地底旅行』)
類語
・うだつがあがらない
意味:いつも上から押えつけられて、出世ができない。運が悪くてよい境遇に恵まれない。うだちが上がらない。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・埋もれる(うもれる)
意味:才能・真価・業績などが、世の中に知られないでいる。うずもれる。(出典:デジタル大辞泉)
・燻ぶる(くすぶる)
意味:地位や状態などが、その段階にとどまったまま低迷している。(出典:デジタル大辞泉)
・人知れず(ひとしれず)
意味:人に気づかれない。(出典:デジタル大辞泉)
・不遇(ふぐう)
意味:時世にめぐまれないために出世できないこと。運が悪くて、才能・人物にふさわしい地位・境遇を得ていないこと。(出典:精選版 日本国語大辞典)