見当
「見当をつける」などのように使う「見当」という言葉。
「見当」は、音読みで「けんとう」と読みます。
「見当」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「見当」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
見当の意味
「見当」には次の四つの意味があります。
1 大体の方向・方角。
2 はっきりしていない事柄について大体の予想をすること。見込み。
3 版画や印刷で、刷る紙の位置を決めるための目印。その形からトンボともいう。
4 数量を表す語に付いて、その程度の数量であることを表す。…ぐらい。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味や使い方については下記の通りです。
見当の意味①「大体の方向・方角。」
「見当」の一つ目の意味は「大体の方向・方角。」です。
例えば、「自宅はこの見当を真っ直ぐ歩いた所にある」という文で「自宅はこの方向を真っ直ぐ歩いた所にある」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・あるいは主人の方で尻のある見当へ顔を持って来たのかも知れない。
(出典:夏目漱石『吾輩は猫である』)
・目を閉じて横の方へうんと投げて、どの見当で音がするか当ててみる。
(出典:鈴木三重吉『千鳥』)
・すると夫人の言葉が、かえって彼の思わくとは逆の見当を向いて出た。
(出典:夏目漱石『明暗』)
見当の意味②「はっきりしていない事柄について大体の予想をすること。見込み。」
「見当」の二つ目の意味は「はっきりしていない事柄について大体の予想をすること。見込み。」です。
例えば、「事の発端を見当した」で「事の発端について、大体の予想をした」という意味になります。また、「入試合格の見当がつく」で「入試合格の見込みがある」となります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・それらの疑問からはいかなる事実が現われてくるか見当がつかなかった。
(出典:ユゴー・ヴィクトル『レ・ミゼラブル』)
・その中で大学と専門学校程度の学生の生活を見当にして寸法を測って見る。
(出典:夢野久作『街頭から見た新東京の裏面』)
・そこで見当がついてみると、何の事だ、これは旅の行商の一隊であった。
(出典:中里介山『大菩薩峠』)
見当の意味③「版画や印刷で、刷る紙の位置を決めるための目印。その形からトンボともいう。」
「見当」の三つ目の意味は「版画や印刷で、刷る紙の位置を決めるための目印。その形からトンボともいう。」です。
この「見当」は、浮世絵用語になります。意味を簡単に説明すると、「用紙の縁を置く位置を決めるための目印」という意味があります。例えば、「版面に見当をつける」で「版面に紙の縁の位置を決めるための目印をつける」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・木版の隅に見当を彫った。
・版面に版画用紙を置いたが、見当の位置が少しずれていて気持ちが悪い。
・自分で版に見当を彫ったが、歪な形になってしまった。
見当の意味④「数量を表す語に付いて、その程度の数量であることを表す。…ぐらい。」
「見当」の四つ目の意味は「数量を表す語に付いて、その程度の数量であることを表す。…ぐらい。」です。
この「見当」は、数量を表す単位の後につけて使い「〜くらい」という意味があります。 例えば、「今手元にある本は、10冊見当だ」という文で「今手元にある本は、10冊くらいだ」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・彼の一日の仕上げ高、はぼ三千枚見当にはまだだいぶ開きがあった。
(出典:島木健作『癩』)
・今では、生きたのが一升二千円見当もするだろう。
(出典:北大路魯山人『京都のごりの茶漬け』)
・そしてその探さは、浅いところでは海面下百メートルという範囲に人口がおよそ百万人見当の都市を建設することになりました。
(出典:海野十三『海底都市』)