滴る
「水も滴るいい女」などのように使う「滴る」という言葉。
「滴る」は、訓読みで「したたる」と読みます。
「滴る」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「滴る」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
滴るの意味
「滴る」には次の二つの意味があります。
1 水などが、しずくになって垂れ落ちる。
2 美しさや鮮やかさがあふれるばかりに満ちている。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味や使い方については下記の通りです。
滴るの意味①「しずくになって垂れ落ちる。」
「滴る」の一つ目の意味は「しずくになって垂れ落ちる。」です。
「滴るさま」など、まさに垂れ落ちる様子を思わせる動詞です。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・それでも頬が濡れ、次から次へと涙が滴るのを、どうしようもなかった。
(出典:宮部みゆき 『ブレイブ・ストーリー 上巻』)
・小舟の中で手をさしのべたお紺の、頬の滴り落ちた涙を思い出していた。
(出典:藤沢周平 『又蔵の火』)
・これだけ汗が滴り落ちる季節では、紙を扱う仕事はできないからである。
(出典:井沢元彦 『GEN 『源氏物語』 秘録』)
・右手に持ったままのナイフの先からも、小さな血の雫が滴り落ちていた。
(出典:勝目梓 『炎』)
・あたりは全くひっそりして、滴り落ちる雫だけが単調な音を立てていた。
(出典:アンデルセン /神西清訳 『即興詩人 上』)
滴るの意味②「美しさや鮮やかさがあふれるばかりに満ちている。」
「滴る」の二つ目の意味は「美しさや鮮やかさがあふれるばかりに満ちている。」です。
滴るさまから転じて、溢れんばかりのさまも表します。主に美しさや鮮やかさなど良い意味で使います。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・年の頃は二十二三、少しふけておりますが、その代り町家にも武家にもない、滴るような美しさがあります。
(出典:野村胡堂 『銭形平次捕物控』)
・門より庭に入りて立てば、木々の緑が滴るばかりに濃く見えるのだもの。
(出典:堺利彦 『獄中生活』)
・その女はその美貌を水も滴るような丸髷と一緒に左右へ静かに振って居る。
(出典:岡本かの子 『春』)
・で遙か遠い所には緑の滴るごとき峰の頂に、千古の雪を戴きたるいわゆる雪峰が泰然たる雄姿を現わして居る様は得もいわれぬ。
(出典:河口慧海 『チベット旅行記』)
・と思うとその元禄女の上には、北村四海君の彫刻の女が御隣に控えたベエトオフェンへ滴るごとき秋波を送っている。
(出典:芥川竜之介 『葱』)