吟味
「品物を吟味する」などのように使う「吟味」という言葉。
「吟味」は、音読みで「ぎんみ」と読みます。
「吟味」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「吟味」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
吟味の意味
「吟味」には次の三つの意味があります。
1 物事を念入りに調べること。また、念入りに調べて選ぶこと。
2 罪状を調べただすこと。詮議(せんぎ)。
3 詩歌を吟じてその趣を味わうこと。
(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
吟味の意味①物事を念入りに調べること。また、念入りに調べて選ぶこと。
「吟味」の一つ目の意味は「物事を念入りに調べること。また、念入りに調べて選ぶこと。」です。
「吟味」には他の意味もありますが、上記の意味で使う場合がほとんどです。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・種々の材料の関係を理論的に吟味して、当然の結論に到達したまでです。
(出典:江戸川乱歩『江戸川乱歩全短編2 本格推理Ⅱ』)
・大工を呼んでねずみの穴の吟味をさせるのもおっくうであるのみならずその効果が疑わしい。
(出典:寺田寅彦『ねずみと猫』)
・男性は、中身を吟味することをしないので、女性が男性をだますのは簡単です。
(出典:岩月謙司『女は男のどこを見ているか』)
・主客対立の認識論的立場というのも、なお一度吟味して見なければならない。
(出典:西田幾多郎『絶対矛盾的自己同一』)
類語
・精査(せいさ)
意味:くわしく調べること。(出典:デジタル大辞泉)
・考察(こうさつ)
意味:物事を明らかにするために、よく調べて考えをめぐらすこと。(出典:デジタル大辞泉)
・検討(けんとう)
意味:種々の面から調べて、良いか悪いかを考えること。(出典:デジタル大辞泉)
・玩味(がんみ)
意味:言葉や文章などの表している意味や内容などを、よく理解して味わうこと。(出典:デジタル大辞泉)
吟味の意味②罪状を調べただすこと。詮議(せんぎ)。
「吟味」の二つ目の意味は「罪状を調べただすこと。」です。
江戸時代に、刑事訴訟や裁判に関連して使われていた言葉で、「原告人、被告人、あるいは被疑者を取り調べて、事件の事実関係を明らかにする」というニュアンスを持っています。今でも、時代小説や時代劇などで使われることがあります。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・すでに芝居町の関係者は逮捕され、町奉行所で吟味を受けているという。
(出典:杉本苑子『絵島疑獄(下))
・下流の渡し口で、旅客の吟味をしていた旗本奴連が、こちらへ向って来た。
(出典:柴田錬三郎『嗚呼 江戸城(上)』)
・吟味役は、三人で、そのうちの二人はひどい薩摩訛りでよくわからなかった。
(出典:司馬遼太郎『燃えよ健2(下)』)
・あまりに御吟味がきびしいので、身におぼえのないことを申立てたのかも知れません。
(出典:岡本綺堂『権三と助十』)
類語
・取り調べ(とりしらべ)
意味:調査機関が、被疑者や参考人の出頭を求めて犯罪に関する事情を聴取すること。(出典:デジタル大辞泉)
・検視(けんし)
意味:事実を明らかにするために、事件の現場などをくわしく調査すること。(出典:デジタル大辞泉)
・詮議(せんぎ)
意味:罪人を取り調べること。また、罪人を捜索すること。(出典:デジタル大辞泉)
・審理(しんり)
意味:裁判の対象になる事実関係および法律関係を裁判所が取り調べて明らかにすること。(出典:デジタル大辞泉)
吟味の意味③詩歌を吟じてその趣を味わうこと。
「吟味」の三つ目の意味は「詩歌を吟じてその趣を味わうこと。」です。
上記が「吟味」の元々の意味(原義)で、ここから派生して「吟味」の他の意味が生まれました。和歌や俳句、詩の表現方法などについて、検討・考察する際に使われます。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・送られてきた十句を繰り返し読んで吟味している間に、棟居は首を傾げた。(出典:森村誠一『新・人間の証明(上)』)
・正造はそう思って、筆を握りつつ、冒頭から一句一字を反復して吟味しだした。
(出典:大鹿卓『渡良瀬川』』)
・然し新短歌様式を規範的に吟味してみて、私の考へが余り間違つてゐるやうには思はれない。
(出典:中原中也『新短歌に就いて』)
・その句を吟味する者はこの境をよく区別して考えなければならん。
(出典:高浜虚子『俳句への道』)
類語
・吟唱(ぎんしょう)
意味:詩歌に節をつけてうたうこと。(出典:デジタル大辞泉)
・吟詠(ぎんえい)
意味:詩歌を節をつけてうたうこと。(出典:デジタル大辞泉)
・朗詠(ろうえい)
意味:詩歌などを、節をつけて声高くうたうこと。(出典:デジタル大辞泉)
・詩吟(しぎん)
意味:読み下した漢詩に節をつけて吟じるもの。(出典:デジタル大辞泉)