雑色
「お供の雑色たち」などのように使う「雑色」という言葉。
「雑色」は、音読みで「ぞうしき」または「ざっしき」「ざっしょく」と読みます。
「雑色」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「雑色」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
雑色の意味
「雑色」には次の二つの意味があります。
1 古代以来、雑事などにたずさわった人びと(出典:旺文社日本史事典 三訂版)
2 いろいろな色がまじった色。また、さまざまな色。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味や使い方については下記の通りです。
雑色の意味①「古代以来、雑事などにたずさわった人びと」
「雑色」の一つ目の意味は「古代以来、雑事などにたずさわった人びと」です。
ひとことで言い換えれば、雑役、つまりは雑用を担う人のことを指します。
「雑色人(ぞうしきにん)」が略された言葉で、中世から近世ごろまで使われた下級の諸種の身分と職掌を表しています。
下級の身分や職掌とは、主に以下4つの身分のことを指します。
①古代の諸官庁に隷属していた最下級の役人。宮廷工房の手工業に従事した。
②院・御所・摂関家で雑役に従事した下級の役人。
③蔵人所 (くろうどどころ) に置かれた下級の職名。
④鎌倉・室町時代、諸家に仕えて雑役に従事した足軽・従者などのこと。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・その次の日も道綱は出かけて往ったが、夕方、また雑色などに送られて来た。
(出典:堀辰雄『かげろうの日記』)
・「そうだ、竹麻呂に訊いてみよう」 この屋敷の雑色に、日ごろ懇意にしている男がいる。
(出典:杉本苑子『胸に棲む鬼』)
・名は蝉丸といい、もともとは式部卿宮の雑色であった人物である。
(出典:夢枕獏『陰陽師生成(なまな)り姫』)
・黒い幌をかけた亡き帝の車は、薄墨色の水干を着た雑色たちに引かれてゆっくりと進む。
(出典:安部龍太郎『戦国秘譚 神々に告ぐ(上)』)
・「六波羅へでござりますか」 付いている雑色は、いぶかしげに主人に念を押した。
(出典:吉川英治『源頼朝』)
雑色の意味②「いろいろな色がまじった色。また、さまざまな色。」
「雑色」の二つ目の意味は「いろいろな色がまじった色。また、さまざまな色。」です。
言い換えると、複数の色が入り混じっていることです。
「雑」には、入り混じるという意味や、純粋ではない、つまり1種類ではないという意味があります。
この意味では「ざっしょく」と読む場合がほとんどです。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・さらにまた雑色のもの、ぼかしのあるもの、二色に等分されたものなどもある。
(出典:ロチ『秋の日本』)
・空はそよいだりはためいたりする布や紙のあらゆる切抜き細工やら雑色やらで一杯である。
(出典:ロチ『秋の日本』)
・空は夕焼して赤い色が天頂を越え、東の方中央山脈の群峰を雑色に染めていた。
(出典:大岡昇平『野火』)
・彼は上衣の釦穴に大きな雑色の綬をつけていた。
(出典:レニエ『燃え上る青春』)
・羊の色は白く、雑色ありといえども白が多し、秋陰の殺気に近きが故に死を聞く時はすなわち懼れず。
(出典:南方熊楠『十二支考』)