趣
「趣がある」などのように使う「趣」という言葉。
「趣」は、訓読みで「おもむき」と読みます。
「趣」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「趣」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
趣の意味
「趣」には次の二つの意味があります。
1 そのものが感じさせる風情。しみじみとした味わい。
2 全体から感じられるようす・ありさま。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
趣の意味①「そのものが感じさせる風情。しみじみとした味わい。」
「趣」の一つ目の意味は「そのものが感じさせる風情。しみじみとした味わい。」です。
人が、うまく言葉にできない好ましい印象を、ある対象から受け取った時に使われます。こ
の意味に限らず、「趣」という言葉は、『源氏物語』の時代から根付く日本的な表現です。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・野生の趣と人工とが過去に於てうまく調和されたまま今日になって居る。
(出典:宮本百合子『日記』)
・灰色の靄の底に鴨川の水が白く流れてゐるのも捨て難い趣であつた。
(出典:薄田泣菫『茶話』)
・小さな虫籠はまことに趣深く、いろいろ変った形で出来ていた。
(出典:モース・エドワード・シルヴェスター『日本その日その日』)
・これはこれで趣もある、と正三は強ひてそんな感想を抱かうとした。
(出典:原民喜『壊滅の序曲』)
類語
・余韻(よいん)
意味:事が終わったあとも残る風情や味わい。(出典:デジタル大辞泉)
・深遠(しんえん)
意味:奥深くて容易に理解が及ばないこと。また、そのさま。(出典:デジタル大辞泉)
・雅(みやび)
意味:みやびやかなこと。奥ゆかしいこと。また、そのさま。風流。(出典:デジタル大辞泉)
・渋い(しぶい)
意味:はででなく落ち着いた趣がある。じみであるが味わい深い。(出典:デジタル大辞泉)
趣の意味②「全体から感じられるようす・ありさま。」
「趣」の二つ目の意味は「全体から感じられるようす・ありさま。」です。
向き合っている事物から漂っている、とその人が感じる、漠然とした空気感のようなものを指します。
この場合、それから受け取る印象の良し悪しは問われません。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・妙な事には太平洋岸の潟と日本海岸の潟とは趣が全く違つて居るのです。
(出典:柳田国男『潟に関する聯想』)
・放蕩の酒で臓腑を洗濯されたような彼の趣もようやく解する事ができた。
(出典:夏目漱石『明暗』)
・刻一刻と時がたつにつれて、庭はますます絵のような趣を見せてきた。
(出典:ホーソン/鈴木武雄訳『七破風の屋敷』)
・それが想像していたとは全く趣が変っていて、しかも一層美しい。
(出典:森鴎外『雁』)
類語
・心証(しんしょう)
意味:心に受ける印象。人から受ける感じ。(出典:デジタル大辞泉)
・情感(じょうかん)
意味:物事に接したときに心にわき起こる感情。また、人の心に訴えるような、しみじみした感じ。(出典:デジタル大辞泉)
・雰囲気(ふんいき)
意味:その場やそこにいる人たちが自然に作り出している気分。また、ある人が周囲に感じさせる特別な気分。ムード。(出典:デジタル大辞泉)
・佇まい(たたずまい)
意味:立っているようす。また、そこにあるもののありさま。そのもののかもし出す雰囲気。
(出典:デジタル大辞泉)