蓋し
「蓋し、そうなると思われる」などのように使う「蓋し」という言葉。
「蓋し」は、訓読みで「けだし」と読みます。
「蓋し」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「蓋し」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
蓋しの意味
「蓋し」には次の三つの意味があります。
1物事を確信をもって推定する意を表す。
2あとに推量の意味を表す語を伴って推定する意を表す。
3 あとに仮定の意味を表す語を伴って推定する意を表す。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
蓋しの意味①「物事を確信をもって推定する意を表す。」
「蓋し」の一つ目の意味は「物事を確信をもって推定する意を表す。」です。
ある程度の責任をもって「こうなるだろう・そういうことだろう」と表すときに使用します。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・之に対する復讐としては蓋し甚だ適切だったと云うべきでありましょう。子爵の用いた武器、即ちこの場合兇器は?
(出典:浜尾四郎『彼は誰を殺したか』)
・蓋し動機は自らを云い現わし尽すことが出来ない性質を有つからである。
(出典:戸坂潤『イデオロギーの論理学』)
・蓋しイデオロギーは決して形式論理的には処理出来ないように出来ている。
(出典:戸坂潤『現代哲学講話』)
類語
・まさしく
意味:まちがいなく。まさに。(出典:デジタル大辞泉)
・たしかに
意味:かなり信頼できると判断・推察するときに用いる語。(出典:デジタル大辞泉)
・たいてい
意味:かなり確かだと推測するさま。ほぼ間違いなく。(出典:デジタル大辞泉)
蓋しの意味②「あとに推量の意味を表す語を伴って推定する意を表す。」
「蓋し」の二つ目の意味は「あとに推量の意味を表す語を伴って推定する意を表す。」です。
①よりも確信から離れて、推測する場合に使用します。使用する際は「たぶん~だろう」のように語尾が「~だろう、かもしれない」といった、意味が不定の要素を含みます。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・支倉に会う事の気が進まなかったのは、蓋し虫が知らしたのであろうか。
(出典:甲賀三郎『支倉事件』)
・蓋しラヴクラフトの書いた小説に半端でない力が蔵されているのであろう。
(出典:酒見賢一『墨攻』)
・蓋し言葉は概念から独立に理解することは出来ないであろう。
(出典:戸坂潤『空間概念の分析』)
類語
・もしかして
意味:疑いながら推定するさま。(出典:デジタル大辞泉)
・あるいは
意味:ある事態が起こる可能性があるさま。(出典:デジタル大辞泉)
・多分(たぶん)
意味:ある事柄についての推量を表す。(出典:デジタル大辞泉)
蓋しの意味③「あとに仮定の意味を表す語を伴って推定する意を表す。」
「蓋し」の三つ目の意味は「あとに仮定の意味を表す語を伴って推定する意を表す。」です。
条件を伴って推量する場合に用います。「~であれば、~だろう」という表現です。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・国許で病床に就いているはずの父がもし知れば、蓋し卒倒することであろう。
(出典:藤水名子『浪漫’s 見参!桜子姫』)
・五万分一図の幽ノ沢山は蓋しその所を得たものと称してよい。
(出典:木暮理太郎『利根川水源地の山々』)
・蓋し事物は人々がそれ自身の立場に一先ず立つのでなければ批判されることは出来ないであろう。
(出典:戸坂潤『科学方法論』)
類語
・ひょっとして
意味:何かのはずみで。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・万が一(まんがいち)
意味:ほとんどないが、ごくまれにあること。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・仮に(かりに)
意味:仮定条件句の中で、現実でない事柄を前提とするときに用いる。(出典:精選版 日本国語大辞典)