舌鼓
「舌鼓を打つ」などのように使う「舌鼓」という言葉。
「舌鼓」は、訓読みで「したつづみ」と読みます。
「舌鼓」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「舌鼓」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
舌鼓の意味
「舌鼓」には次の二つの意味があります。
1 うまいものを飲食したときに舌を鳴らす音。
2 不満げに舌を鳴らす音。舌打ち。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味や使い方については下記の通りです。
舌鼓の意味①「うまいものを飲食したときに舌を鳴らす音。」
「舌鼓」の一つ目の意味は「うまいものを飲食したときに舌を鳴らす音。」です。
「鼓」は歌舞伎や能などで使用される打楽器のことで、舌を打ち鳴らすと響くコンっという音を鼓に例えて生まれた言葉です。
美味しい食べ物を食べるときは、口の中で味わうために思わず舌を打ち鳴らしてしまうことから、この意味合いで用いられるようになりました。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・羅漢はその箱弁を、まるで大変なご馳走のように、舌鼓を打って食べた。
(出典:高見順『いやな感じ』)
・先生は全身にその強い抵抗を感じて、官能の舌鼓を打ったかも知れません。
(出典:岡本かの子『生々流転』)
・頼光たちはその肉を切って、さもうまそうに舌鼓をうちながら食べました。
(出典:楠山正雄『大江山』)
・我々が喜んで舌鼓を打っているのを見ると、群集の面にはますます満足の色が泛んできた。
(出典:橘外男『ウニデス潮流の彼方』)
・シュウマイにも舌鼓をうち、あっと言う間に五個を口の中にいれた。
(出典:帚木蓬生『受精』)
舌鼓の意味②「不満げに舌を鳴らす音。舌打ち。」
「舌鼓」の二つ目の意味は「不満げに舌を鳴らす音。舌打ち。」です。
上記の意味①のようにポジティブな表現で使われることの多い「舌鼓」ですが、イライラなどネガティブな気持ちを表すときに用いられることもあります。
なお、「舌打ち」は「舌鼓」より古い言葉であることから、「舌鼓を打つ」の略ではありません。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・否、彼は彼女の血と膏とで、もう十分舌鼓を打った後ではないか。
(出典:菊池寛『島原心中』)
・「下手人と名乘つて出たのが三人さ」 萬七は大きく舌鼓を打ちます。
(出典:野村胡堂『銭形平次捕物控』)
・余は舌鼓うって、門をたゝいて、強て開けてもらって内に入った。
(出典:徳冨蘆花『みみずのたはこと』)
・彼は舌鼓をうって、案内者なしに妻と二人西を指して迦南の地を探がす可く出かけた。
(出典:徳冨蘆花『みみずのたはこと』)
・こういう淫らな媛をも吾は欲していたのだ、と倭建は舌鼓を打ちながら前に進む。
(出典:黒岩重吾『白鳥の王子 ヤマトタケル 6 終焉の巻』)