空蝉
「空蝉を集める」などのように使う「空蝉」という言葉。
「空蝉」は、音読みで「うつせみ」と読みます。
「空蝉」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「空蝉」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
空蝉の意味
「空蝉」には次の二つの意味があります。
1 この世に現に生きている人。転じて、この世。うつしみ。
2 蝉の抜け殻。また、蝉。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
空蝉の意味①「この世に現に生きている人。転じて、この世。うつしみ。」
「空蝉」の一つ目の意味は「この世に現に生きている人。転じて、この世。うつしみ。」です。
この世それ自体やそこに生きる人に対して使われます。
具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・母の看病をつづけましたが空蝉のときもまたず、今月十一日になくなりました。
(出典:滝沢馬琴『里見八犬伝 巻1』)
・正の肌身はそこで藻抜けて、ここに空蝉の立つようなお澄は、呼吸も黒くなる、相撲取ほど肥った紳士の、臘虎襟の大外套の厚い煙に包まれた。
(出典:泉鏡花『鷭狩』)
・あゝ、まぼろしのなつかしい、空蝉のかやうな風土は、却つてうつくしいものを産するのか、柳屋に艶麗な姿が見える。
(出典:泉鏡花『三尺角』)
・空蝉の世を悲しむほど聞ゆ。
(出典:唐木順三『無用者の系譜』)
類語
・浮世(うきよ)
意味:無常のこの世。(出典:デジタル大辞泉)
・世俗(せぞく)
意味:俗世間。(出典:デジタル大辞泉)
・現し世(うつしよ)
意味:この世。(出典:デジタル大辞泉)
・世上(せじょう)
意味:世の中。(出典:デジタル大辞泉)
空蝉の意味②「蝉の抜け殻。また、蝉。」
「空蝉」の二つ目の意味は「蝉の抜け殻。また、蝉。」です。
セミ自体やその抜け殻を意味します。
具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・これを漢字にあてるに際し、虚蝉、空蝉などと表記したため、そこから蝉の脱け殻という意味にも使われるようになった、と思われる。
(出典:大岡信『名句歌ごよみ〔夏〕』)
・見えるのは空蝉のこえ。
(出典:奈須きのこ『月姫 遠い葦切(秋葉・ノーマルエンド)』)
・三鬼のこの句は、「空蝉」という季語に内在するそういう性質を鮮やかに具象化してみせたような句である
(出典:大岡信『名句歌ごよみ〔夏〕』)
類語
・秋蝉(あきぜみ)
意味:秋になってなお鳴いている蝉。(出典:デジタル大辞泉)
・寒蝉(かんせん)
意味:秋に鳴くセミ。(出典:デジタル大辞泉)
・夏蝉(なつぜみ)
意味:夏に現われるセミ。(出典:デジタル大辞泉)
・夕蝉(ゆうぜみ)
意味:夕方に鳴くセミ。(出典:デジタル大辞泉)