抱く
「我が子を抱く」などのように使う「抱く」という言葉。
「抱く」は、訓読みで「だく」または「いだく」と読みます。
「抱く」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「抱く」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
抱くの意味
「抱く」には次の三つの意味があります。
1 腕でかかえ持つ。だく。
2 かかえるように包み込む。
3 ある考えや感情をもつ。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
抱くの意味①「腕でかかえ持つ。だく。」
「抱く」の一つ目の意味は「腕でかかえ持つ。だく。」です。
大きさや重さがある物を運ぶときなどの動作を意味します。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・朽ちかけた衣服に包まれた白骨を抱いてその眼の前にあらわれた。
(出典:田中貢太郎『悪僧』)
・ネルロの両手は、再び犬のからだを抱きました。
(出典:ド・ラ・ラメー・マリー・ルイーズ『フランダースの犬』)
・妾は、この手紙を抱いて、貴男のお手にかかって母のいる国へ行きます。
(出典:大阪圭吉『とむらい機関車』)
類語
・持つ(もつ)
意味:手にとる。手の中ににぎる。(出典:デジタル大辞泉)
・掴む(つかむ)
意味:手でしっかりと握り持つ。(出典:デジタル大辞泉)
・抱える(かかえる)
意味:物を囲むように腕を回して持つ。胸にだくようにして持つ。(出典:デジタル大辞泉)
抱くの意味②「かかえるように包み込む。」
「抱く」の二つ目の意味は「かかえるように包み込む。」です。
「鳥が卵を抱く」というように、大きく包み込んで覆うように守るようにする動作を表す言葉です。
また性行為を示すこともあります。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・僕はお照の部厚な膝の上に抱きあげられていたのだった。
(出典:海野十三『深夜の市長』)
・私はその人の手に抱かれている時にね、一番安心していたんですの。
(出典:国枝史郎『レモンの花の咲く丘へ』)
・旅人は夢のような気持で何か暖いものに抱かれたような気持で歩きました。
(出典:宮本百合子『無題(一)』)
類語
・被る(かぶる)
意味:頭や顔などにそれを覆うものを載せる。また、全体をすっぽり覆う。(出典:デジタル大辞泉)
・体験(たいけん)
意味:自分が実際に身をもって経験すること。また、その経験。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・擁する(ようする)
意味:だきかかえる。いだく。(出典:デジタル大辞泉)
抱くの意味③「ある考えや感情をもつ。」
「抱く」の三つ目の意味は「ある考えや感情をもつ。」です。
心の奥にしっかりと感じられる、確たる感情を自覚することです。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・ぼくには、子供に対して強い愛を抱くのが、不可能のように思われた。
(出典:ラディゲ/江口清訳『肉体の悪魔』)
・彼は神のような心を抱きながら、或機会をとり逃がそうとしていた。
(出典:富ノ沢麟太郎『あめんちあ』)
・それは、かねて僕が抱いている疑問に、十分にこたえてくれたようだ。
(出典:海野十三『海底都市』)
・だから私は子に対していささかすまぬような気持ちを抱いている。
(出典:伊丹万作『顔の美について』)
・その頃から次第にわたしは、医師に対して不信の念を抱くようになった。
(出典:三浦綾子『塩狩峠 道ありき』)
・きっとわたしに信頼感を抱かせるようにと命令されたんだと思います。
(出典:クリスティ/一ノ瀬直二訳『秘密組織』)
類語
・懐く(なつく)
意味:慣れ親しむ。慣れて付き従う。(出典:デジタル大辞泉)
・宿す(やどす)
意味: 内に含み持つ。(出典:デジタル大辞泉)
・抱懐(ほうかい)
意味:心中に考えを抱き持つこと。また、その考えや計画。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・覚える(おぼえる)
意味: からだや心に感じる。(出典:デジタル大辞泉)
・催す(もよおす)
意味: そういう気持ちにさせる。かきたてる。(出典:デジタル大辞泉)
・受ける(うける)
意味:他から与えられる。身に授かる。(出典:デジタル大辞泉)