憚る
「それをするのは憚られる」などのように使う「憚る」という言葉。
「憚る」は、訓読みで「はばかる」と読みます。
「憚る」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「憚る」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
憚るの意味
「憚る」には次の三つの意味があります。
1 差し障りをおぼえてためらう。気がねする。遠慮する。
2 幅をきかす。増長する。いばる。
3 いっぱいに広がる。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
憚るの意味①「差し障りをおぼえてためらう。気がねする。遠慮する。」
「憚る」の一つ目の意味は「差し障りをおぼえてためらう。気がねする。遠慮する。」です。
言い換えると、ある物事をすすめる(ある行為を実行に移す)のに気が進まない、という意味です。
多くの場合が、この①の意味で使われます。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・今はもう誰に憚るところもなく、一軒の家を借り同棲することとなった。
(出典:海野十三『棺桶の花嫁』)
・先生ももとより酒好きであったから、塾生等も何ら憚ることなく酒を飲んだ。
(出典:内藤鳴雪『鳴雪自叙伝』)
・鎌子も、その言葉を口にするのは憚られたが、心の中ではそう思っていた。
(出典:井沢元彦『日本史の叛逆者 私説・壬申の乱』)
類語
・遠慮(えんりょ)
意味:人に対して、言葉や行動を慎み控えること。(出典:デジタル大辞泉)
・控える(ひかえる)
意味:自制や配慮をして、それをやめておく。見合わせる。(出典:デジタル大辞泉)
・気兼ね(きがね)
意味:他人の思わくなどに気をつかうこと。(出典:デジタル大辞泉)
憚るの意味②「幅をきかす。増長する。いばる。」
「憚る」の二つ目の意味は「幅をきかす。増長する。いばる。」です。
言い換えると、つか上がって調子にのっている、という意味です。
多くの場合、ことわざの「憎まれっ子世に憚る」の表現で使われます。
また、「憚りながら」という形で「生意気を言うようですが」という意味の副詞として、かしこまった場面で使われる場合もあります。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・昔から厚かましくて図々しいのに上手いことやってて、まさに「憎まれっ子世に憚る」ってやつなんだよな、アイツは。
・頭では俊夫君にかないませんが、腕は憚りながら、柔道三段です。
(出典:小酒井不木『現場の写真』)
・憚りながらここまで来るには相当の修業が要いるんだからね。
(出典:夏目漱石『明暗』)
類語
・図に乗る(ずにのる)
意味:いい気になって勢いづく。調子に乗る。つけあがる。(出典:デジタル大辞泉)
・思い上がる(おもいあがる)
意味:うぬぼれる。いい気になる。(出典:デジタル大辞泉)
・のさばる
意味:横柄な態度をする。ほしいままにふるまう。また、勢力を振るう。(出典:精選版 日本国語大辞典)
憚るの意味③「いっぱいに広がる。」
「憚る」の三つ目の意味は「いっぱいに広がる。」です。
②の意味では人間の態度が比喩的に「広がっている」ことを意味していましたが、単純に物理的・空間的に広がっているという意味もあります。
あまり好ましくないものが広がっている様子を表すときに用いられます。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・一間(ひとま)に憚るほどの物の面(おもて)出(い)できて
(出典:平家物語 五・物怪之沙汰)
・ここらへん一体、外来種の雑草が憚っていて、手が付けられない。
・大きなトラックが道に憚っていて通れない。
類語
・蔓延る(はびこる)
意味:よくないものの勢いが盛んになって広まる。広まって勢力を張る。(出典:デジタル大辞泉)
・のさばる
意味:勝手に場所を占める。ほしいままにのびひろがる。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・広まる(ひろまる)
意味:広く行きわたる。また、普及する。(出典:デジタル大辞泉)