慕う
「恋慕う」などのように使う「慕う」という言葉。
「慕う」は、訓読みで「したう」と読みます。
「慕う」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「慕う」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
慕うの意味
「慕う」には次の三つの意味があります。
1 恋しく思う。懐かしく思う。
2 離れがたく思ってあとを追う。
3 目上の人の人格・識見などにひかれる。憧れる。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味や使い方については下記の通りです。
慕うの意味①「恋しく思う。懐かしく思う。」
「慕う」の一つ目の意味は「恋しく思う。懐かしく思う。」です。
例えば、「故郷を慕う」で「故郷を懐かしく思う」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・だからぼくの両親は、それらの子たちには、親のごとく慕われたらしい。
(出典:吉川英治『忘れ残りの記』)
・あれほど彼女を慕っていた猫たちも今では影も形も見えなかった。
(出典:奈須きのこ『歌月十夜-1 本編』)
・彼は、故郷を慕うのあまり、病気になればとさえ考えていたのでした。
(出典:小川未明『風雨の晩の小僧さん』)
慕うの意味②「離れがたく思ってあとを追う。」
「慕う」の二つ目の意味は「離れがたく思ってあとを追う。」です。
この場合の「慕う」をわかりやすく説明すると、「離れたくないと思ってあとを追う」という意味があります。例えば、「友を慕いついて行く」という使い方で、「離れたくないと思い、友の後をついて行く」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・私の所によく遊びに来、私が特に何もしてやれないのに慕っていてくれる。
(出典:伊藤整『太平洋戦争日記(三)』)
・おそらく米友を送るべくそのあとを慕って行ったものと思われます。
(出典:中里介山『大菩薩峠』)
・雨は降ってはいないが、濡れた空気が慕いよるように家の中へ入ってきた。
(出典:吉田知子『無明長夜』)
慕うの意味③「目上の人の人格・識見などにひかれる。憧れる。」
「慕う」の三つ目の意味は「目上の人の人格・識見などにひかれる。憧れる。」です。
この場合の「慕う」をわかりやすく説明すると、「自分より上の立場の人の人柄や、物の見方を好ましく思う」という意味があります。例えば、「上司を慕う」で「上司の人柄や物の見方を好ましく思う」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・あたしを慕っているどこかの人からでももらったのかもしれなくってよ。
(出典:イプセン/矢崎源九郎訳『人形の家』)
・マリユスが彼女を慕い彼女を崇拝したのは、きわめて当然のことだった。
(出典:ユゴー/斎藤正直訳『レ・ミゼラブル(下)』)
・それは、何十人いた王の中には、立派な政治で国民から慕われた者もいたさ。
(出典:時雨沢恵一『キノの旅 第1巻』)