恰も
「恰もそれが本当であるかのように語った」などのように使う「恰も」という言葉。
「恰も」は、訓読みで「あたかも」と読み、「宛も」とも表記できます。
「恰も」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「恰も」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
恰もの意味
「恰も」には次の二つの意味があります。
1 あるものが他によく似ていることを表す。まるで。まさしく。ちょうど。
2 ちょうどその時。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
恰もの意味①「あるものが他によく似ていることを表す。まるで。まさしく。ちょうど。」
「恰も」の一つ目の意味は「あるものが他によく似ていることを表す。まるで。まさしく。ちょうど。」です。
言い換えると、まさしくその状態に相当したり、類似したりするさまを表しています。
この言葉のあとには、「~ような」「~ように」「~のごとく」等といった比喩を表す表現が伴われます。
小説などでの具体的な使い方や類語は下記の通り。
使い方・例文
・子路には、それが恰も二つの案山子のように思えてならなかった。
(出典:下村湖人『論語物語』)
・私は恰も鉄が磁石に引きつけられるように、始終彼女の方へ気を惹かれた。
(出典:豊島与志雄『或る男の手記』)
・積雪の中に所々、恰も錆びた剣の如く、枯れた蘆の葉が頭を出して居る。
(出典:石川啄木『雪中行』)
・恰も小声で何事か囁くかのやうな微妙な甘美さに満ちた靴の音が響いた。
(出典:牧野信一『痴酔記』)
類語
・丸で(まるで)
意味:違いがわからないほどあるものやある状態に類似しているさま。あたかも。さながら。(出典:デジタル大辞泉)
・宛ら(さながら)
意味:非常によく似ているさま。まるで。そっくり。(出典:デジタル大辞泉)
・丁度/恰度(ちょうど)
意味:そっくりそのままある物事にたとえられるさま。まるで。さながら。(出典:デジタル大辞泉)
・言ば/謂ば(いわば)
意味:言ってみれば。たとえて言えば。たとえば。(出典:精選版 日本国語大辞典)
恰もの意味②「ちょうどその時。」
「恰も」の二つ目の意味は「ちょうどその時。」です。
言い換えると、まさに何かが起こっている、行われようとしているなど、ぴたりとタイミングが合っている様を表しています。
多くの場合、前後に2つの出来事が並び、その2つが同時に起こったことを表現します。
また、時刻や年月、季節、時期、年齢などの時にまつわる表現を伴って用いられることが多いのも特徴です。
小説などでの具体的な使い方や類語は下記の通り。
使い方・例文
・私が会ったのは恰もその苦労の最中の岩本六段の姿であったらしい。
(出典:石川達三『心に残る人々』)
・特に寂心が僧となっての二三年は恰も大江定基が三河守になっていた時である。
(出典:幸田露伴『連環記』)
・余が戸口まで行くと恰も中から看護人の服を着けた男が出て来た。
(出典:黒岩涙香『幽霊塔』)
・獄に下った時は懿宗の咸通九年で、玄機は恰も二十六歳になっていた。
(出典:森鴎外『魚玄機』)
類語
・折しも(おりしも)
意味:ちょうどその時。折から。(出典:デジタル大辞泉)
・頃しも(ころしも)
意味:その時ちょうど。ちょうどそのおり。(出典:デジタル大辞泉)
・矢先(やさき)
意味:物事が始まろうとする、ちょうどそのとき。(出典:デジタル大辞泉)
・丁度(ちょうど)
意味:ある物事が、そのときまさに行われているさま。(出典:デジタル大辞泉)