呈する
「惨状を呈する」などのように使う「呈する」という言葉。
「呈する」は、音読みで「ていする」と読みます。
「呈する」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「呈する」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
呈するの意味
「呈する」には次の二つの意味があります。
1 差し出す。また、差し上げる。進呈する。
2 ある状態を表す。示す。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
呈するの意味①「差し出す。また、差し上げる」
「呈する」の一つ目の意味は「差し出す。また、差し上げる」です。
相手に対して物や言葉などを差し出す、という意味で使います。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・この器は大名と多紀法印とに茶菓を呈する時に限って用いたそうである。
(出典:森鴎外『渋江抽斎』)
・この点について、われわれは喜んで彼に公平なる賛辞を呈するものである。
(出典:ユゴー・ヴィクトル『レ・ミゼラブル』)
・そう安易に群れ集うものではない、と遠まわしに苦言を呈する人もいた。
(出典:小林信彦『夢の砦』)
・私が驚き、疑問を呈すると、彼は数字を挙げて自信たっぷりに説明した。
(出典:山本弘『神は沈黙せず』)
類語
・進呈(しんてい)
意味:人に物を差し上げること。(出典:デジタル大辞泉)
・進上(しんじょう)
意味:人に物を差し上げること。(出典:デジタル大辞泉)
・差上げる(さしあげる)
意味:「与える」「やる」の意の謙譲語で、その相手を敬う。(出典:デジタル大辞泉)
・贈呈(ぞうてい)
意味:人に物を贈ること。物を差し上げること。(出典:デジタル大辞泉)
呈するの意味②「ある状態を表す。示す」
「呈する」の二つ目の意味は「ある状態を表す。示す」です。
この場合は、物や言葉を贈るのではなく何かの状態になっていることを示します。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・どうして一人の演奏家で、ああした効果を呈することができるのだろうか?
(出典:ラヴクラフト全集2『02 「エーリッヒ・ツァンの音楽」』)
・脳が損傷をうけて、分裂病と類似の症状を呈する場合があるわけですね。
(出典:西風隆介『神の系譜Ⅴ 竜の時間 亡国』)
・ 夜祭りと呼ばれて、領内一番のにぎわいを呈することになったのである。
(出典:藤沢周平『蝉しぐれ』)
・体のところどころに黒い毛が混じっていて、両眼の下は黒褐色を呈する。
(出典:佐藤垢石『老狸伝』)
類語
・表示(ひょうじ)
意味:はっきりと表し示すこと。(出典:デジタル大辞泉)
・表出(ひょうしゅつ)
意味:心の中にあるものが外にあらわれでること。また、あらわしだすこと。(出典:デジタル大辞泉)
・現れる(あらわれる)
意味:隠れていたものが表面に出てくる。感情・思想などが表面から知られる状態になる。(出典:デジタル大辞泉)