別珍
「別珍の靴」などのように使う「別珍」という言葉。
「別珍」は、音読みで「べっちん」と読みます。
「別珍」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「別珍」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
別珍の意味
「別珍」には次の意味があります。
・ベルベティーンvelveteenの日本語化したもので、添毛(てんもう)織ビロードの一種。この別珍は緯(よこ)糸を切ってパイルとした緯毛ビロードで、まず地の組織を平織または綾(あや)織とし、それに毛緯を幾本かの経(たて)糸を越えて畝(うね)のように組織させ、織り終わってから生地(きじ)を台の上に置いて、剪毛刀(せんもうとう)でループになった毛緯を切り、整理仕上げをする。主産地は、静岡県磐田(いわた)市南東部(旧福田(ふくで)町地域)で、婦人・子供服によく用いられている。(出典:日本大百科全書(ニッポニカ))
ビロードの一種です。唐天とも言います。
小説などでの具体的な使い方や類語は下記の通り。
使い方・例文
・それに、私がたった一つ漢口の路傍の市から買って帰った別珍の中華靴を履くのである。
(出典:壇一雄『リツ子 その愛・その死』)
・腰まで裸になり、別珍のズボンが、華奢な体からずり落ちていた。
(出典:ロレンス/飯島淳秀訳『チャタレイ夫人の恋人』)
・白く丸い腕を男の赤茶けた筋っぽい首に回して、黄金色の頭を男の別珍のチュニックに預けていた。
(出典:ドイル・アーサー・コナン『緋のエチュード』)
・一方、上司のゼッペキハゲは社内では別珍のぞうりをパタパタいわせながら歩いていた。
(出典:群ようこ『別人「群ようこ」のできるまで』)
・お咲は赤い別珍の肩かけ鞄を抱き、足ずりしながら号泣した。
(出典:石牟礼道子『十六夜橋』)
類語
・ビロード
意味:天鵞絨の字を当てる。ベルベットとも。ポルトガル語のveludoの転訛(てんか)といい、16世紀に渡来した。パイル織物の代表で、広く別珍(べっちん)やコーデュロイなども含めるが、狭義には絹の経(たて)ビロードをさし本天と称する。(出典:百科事典マイペディア)
・モケット
意味:経(たて)パイル織物(添毛織物)の一種で、織物表面に立毛を有する高級な椅子生地(いすきじ)や、車両の座席用の生地。その織物の地織は、経緯(たてよこ)ともに綿糸を使い強固に織り上げ、表面に出るパイル糸には上等な梳毛(そもう)糸を使うことが多い。(出典:日本大百科全書(ニッポニカ))
・本天(ほんてん)
意味:(「天」はビロードのあて字「天鵞絨」の略) ビロード織の一種。経(たていと)も緯(よこいと)も絹糸で織ったもの。江戸時代、輸入品のビロードに対して、和製のビロードの称。本ビロード。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・羅紗(ラシャ)
意味:紡毛織物の一種。地が厚く純毛製と毛綿混紡製があり、織目の見えないように縮絨(しゆくじゆう)、起毛、剪毛(せんもう)の加工仕上げを行ったものの総称。(出典:世界大百科事典 第2版)
・フランネル
意味:日本では略してフラノとも。毛織物の一種。綿ネルをネルというのに対し本ネルとも。経(たて)糸、緯(よこ)糸とも紡毛糸を用いるか、経に梳毛(そもう)糸、緯に紡毛糸を使用し、製織後に軽く縮充して起毛する。(出典:百科事典マイペディア)