寂滅
「寂滅の思想」などのように使う「寂滅」という言葉。
「寂滅」は、音読みで「じゃくめつ」と読みます。
「寂滅」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「寂滅」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
寂滅の意味
「寂滅」には次の二つの意味があります。
1 仏語。煩悩の境地を離れ、悟りの境地に入ること。涅槃。
2 消滅すること。死ぬこと。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味や使い方については下記の通りです。
寂滅の意味①「仏語。煩悩の境地を離れ、悟りの境地に入ること。涅槃。」
「寂滅」の一つ目の意味は「仏語。煩悩の境地を離れ、悟りの境地に入ること。涅槃。」です。
この意味は、心身を悩ませたり苦労させたりする束縛から離れ、安楽・円満の境地に入ることを指す仏語です。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・ただその時代にはそれがまだ寂滅の思想にしみない積極的な姿で現われている。
(出典:寺田寅彦『俳諧の本質的概論』)
・芭蕉のいわゆる寂びとは寂びしいことでなく仏教の寂滅でもない。
(出典:モンテーニュ・ミシェル・エケム・ド『モンテーニュ随想録』)
・アイデアを思いついてそれを広がらせずにおける人物はよほど寂滅の人である。
(出典:開高健『青い月曜日』)
・この寂滅あるいは虚無的な色彩が中古のあらゆる文化に滲透しているのは人の知るところである。
(出典:寺田寅彦『俳諧の本質的概論』)
・上野の鐘が鳴る前世紀の人達が幾百年聞き澄ましたそれと同じ寂滅無常の声。
(出典:永井荷風『曇天』)
寂滅の意味②「消滅すること。死ぬこと。」
「寂滅」の二つ目の意味は「消滅すること。死ぬこと。」です。
この意味では、「消えてなくなること」すなわち「死ぬこと」を指します。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・その為にとうとう八十一歳にしてクシナガラという処に寂滅したのである。
(出典:宮沢賢治『ビジテリアン大祭』)
・古い自分が寂滅し、生まれ変わった新たな自分が現前するのである。
(出典:玄侑宗久『死んだらどうなるの?』)
・彼は安息をこそ要求したが、寂滅を要求したのではない。
(出典:賀川豊彦『空中征服』)
・それは寂滅とでもいうしかなかった。
(出典:開高健『青い月曜日』)
・人間もそのうち寂滅と御出になるべく、それまでに色々なものを書いて死に度と存候。
(出典:高浜虚子『漱石氏と私』)