虻蜂取らず
「それでは虻蜂取らずになってしまう」などのように使う「虻蜂取らず」という言葉。
「虻蜂取らず」は、「あぶはちとらず」と読みます。
「虻蜂取らず」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「虻蜂取らず」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
虻蜂取らずの意味
「虻蜂取らず」には次の意味があります。
・二つのものを同時に取ろうとして両方とも得られないこと。欲を出しすぎると失敗することのたとえ。(出典:デジタル大辞泉)
「虻も取らず蜂も取らず」が簡略化された言葉です。
クモの巣を張ったクモが、虻と蜂がクモの巣にかかったので、虻を放っておいて蜂を取りに行こうとすると、虻が逃げようとするので、また虻の方に行くと蜂が逃げようとする、という様子から、2つのものを同時に得ようと欲張ると結局何も得られず失敗する、という意味の言葉になりました。
小説などでの具体的な使い方や類語は下記の通り。
使い方・例文
・利口な人間なら、そんな虻蜂取とらずの手は使わない。
(出典:佐竹一彦『ショカツ』)
・実務と学務とが有機的に密着すれば、この研修は成功し、いささかでも、この二つの実行過程に溝みぞができれば、あぶはち取らずの結果に終った。
(出典:新田次郎『孤高の人』)
・そんな暴力ふるって、万一のことがあったら、あぶはち取らずになるわ。
(出典:南里征典『自由ケ丘密会夫人)
・つまり虻蜂取らずの無頼漢になり終ってしまわねばならぬ。
(出典:相馬愛蔵『私の小売商道』)
・結局はそれがしは虻蜂取らず、ただ中納言さまが主上のお怒りを受けてお側から遠ざけられたという結果になりました。
(出典:福永武彦『風のかたみ』)
類語
・欲の熊鷹股を裂く(よくのくまたかまたをさく)
意味:《熊鷹が、同時に2匹の猪につかみかかったが、猪はそれぞれ反対の方向に駆けだしたので、熊鷹の股が裂けたということから》あまり欲が深いと災いを招くというたとえ。(出典:デジタル大辞泉)
・大欲は無欲に似たり(たいよくはむよくににたり)
意味:欲の深い者は、欲のために目がくらんで損を招きやすく、結局無欲と同じ結果になる。(出典:デジタル大辞泉)
・二兎を追う者は一兎をも得ず(にとをおうものはいっとをもえず)
意味:二つの目標を同時に追求しようとすると、結局、どちらも取り逃がしてしまうことのたとえ。(出典:ことわざを知る辞典)
・一も取らず二も取らず(いちもとらずにもとらず)
意味:二つのものを両方とも手に入れようとすると、どちらも手に入れることができないということ。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・右手に円を画き左手に方を画く(ゆうしゅにえんをえがきさしゅにほうをえがく)
意味:右の手で円を描きながら左の手で四角形を描くように、同時に二つのことをしようとすれば、どちらもうまくいかなくなるというたとえ。(出典:デジタル大辞泉)