愛嬌
「愛嬌がある」などのように使う「愛嬌」という言葉。
「愛嬌」は、音読みで「あいきょう」と読みます。
「愛嬌」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「愛嬌」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
愛嬌の意味
「愛嬌」には次の三つの意味があります。
1 表情や言動が愛らしく、人好きのすること。
2 好ましさを感じさせたり、笑いを誘うような言動や表情。愛想。
3 商店で客の気を引くために行う、値引き・おまけ・催し物など。(出典:大辞林 第三版)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
愛嬌の意味①「表情や言動が愛らしく、人好きのすること。」
「愛嬌」の一つ目の意味は「表情や言動が愛らしく、人好きのすること。」です。
「愛嬌のある娘」で女の子の可愛らしいさまを表します。
単純に顔立ちが良いのではなく、笑顔が可愛らしかったり、仕草が可愛らしいことなどを指します。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・或はまた非常に愛嬌のある美しさだという風に云うこともありましょう。
(出典:岸田国士『俳優倫理』)
・一方、杏奴のほうは愛嬌があって、人好きがするかわいい感じの人である。
(出典:群ようこ『贅沢貧乏のマリア』)
・笑うと急に目もとに愛嬌があらわれて男好きのする顔立ちになった。
(出典:光瀬龍『寛永無明剣』)
類語
・可愛らしい(かわいらしい)
意味:子供らしい無邪気さや見た目の好ましさで、人をほほえませるようなさま。(出典:デジタル大辞泉)
・あどけない
意味:無邪気でかわいい。無心である。(出典:デジタル大辞泉)
・愛くるしい(あいくるしい)
意味:たいへんかわいらしい。(出典:大辞林 第三版)
愛嬌の意味②「好ましさを感じさせたり、笑いを誘うような言動や表情。愛想。」
「愛嬌」の二つ目の意味は「好ましさを感じさせたり、笑いを誘うような言動や表情。愛想。」です。
この意味は、どこかひょうきんで憎めない様子を表しています。
また、「ご愛敬」と「ご」をつけて失敗の言い訳や謙遜の意を込めて用いる場合もあります。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・これは、すぐ近所の新聞社の二の面の豪傑兼愛嬌者である。
(出典:国木田独歩『号外』)
・あっさりと、いささかおかしみのある、愛嬌のある負け方をすればよい。
(出典:陳舜臣『秘本三国志 04 (四)』)
・憤慨ばかりが能ではあるまいから、一つ汽車中の駄洒落を御愛嬌に記そう。
(出典:押川春浪『本州横断 癇癪徒歩旅行』)
類語
・ユーモラス
意味:ユーモアのあるさま。おかしみのあるさま。(出典:デジタル大辞泉)
・和む(なごむ)
意味:気持ちがおだやかになる。なごやかになる。(出典:大辞林 第三版)
・茶番(ちゃばん)
意味:底の見えすいた、ふざけたふるまい(出典:精選版 日本国語大辞典)
愛嬌の意味③「商店で客の気を引くために行う、値引き・おまけ・催し物など。」
「愛嬌」の三つ目の意味は「商店で客の気を引くために行う、値引き・おまけ・催し物など。」です。
機嫌とって気に入られるようにする場合に、この意味が用いられ、「愛嬌をふりまく」等の使い方をします。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・女はことさらにそれを開けて内から首を出すほどの愛嬌も見せなかった。
(出典:夏目漱石『彼岸過迄』)
・英二はそんなことはおくびにも出さず、出席者に愛嬌を振りまいていた。
(出典:佐藤正明『トヨタ・GM 巨人たちの握手』)
・元これ愛嬌商売なれば第一に世間に従つて行かねばならぬなり。
(出典:永井荷風『矢はずぐさ』)
類語
・愛想(あいそ)
意味:客などに対するもてなし・心遣い。(出典:デジタル大辞泉)
・媚びる(こびる)
意味:気に入られるように振る舞う。相手の機嫌をとる。(出典:大辞林 第三版)
・もてなす
意味:御馳走を出すなどして、心をこめて客を接待する。(出典:大辞林 第三版)