朦朧
「意識が朦朧とする」などのように使う「朦朧」という言葉。
「朦朧」は、音読みで「もうろう」と読みます。
「朦朧」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「朦朧」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
朦朧の意味
「朦朧」には次の三つの意味があります。
1 ぼんやりとかすんで、はっきり見えないさま。
2 物事の内容・意味などがはっきりしないさま。
3 意識が確かでないさま。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
朦朧の意味①「ぼんやりとかすんで、はっきり見えないさま。」
「朦朧」の一つ目の意味は「ぼんやりとかすんで、はっきり見えないさま。」です。
視覚的に判然としないことを指します。
霞む、滲む、濁るなど輪郭がはっきりと分からなくなる、もしくは分かり辛い状態のことです。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・ぼくは制御卓の前に坐すわって、朦朧とした眼でスクリーンを見つめていた。
(出典:山田正紀『神狩り』)
・ふと、そのとき、朦朧としたおれの目が、机の上に白い封筒を確認した。
(出典:樋口有介『ろくでなし』)
・間もなく、反絵の片眼は赤銅のような顔の中で、一つ朦朧と濁って来た。
(出典:横光利一『日輪』)
類語
・ぼんやり
意味:形や色彩が、ぼけていてはっきりしないさまを表わす語。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・霞む(かすむ)
意味:霞がかかったような状態になる。ぼんやりして、物の姿や形がはっきり見えなくなる。(出典:デジタル大辞泉)
・不明瞭(ふめいりょう)
意味:はっきりしないこと。あいまいなこと。また、そのさま。(出典:デジタル大辞泉)
朦朧の意味②「物事の内容・意味などがはっきりしないさま。」
「朦朧」の二つ目の意味は「物事の内容・意味などがはっきりしないさま。」です。
物事の意味などが、曖昧ではっきりしないことを意味します。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・いずれにしても先生のいう罪悪という意味は朦朧としてよく解らなかった。
(出典:夏目漱石『こころ』)
・どんなに表現の朦朧たるものでも、たしかに新しい魅力には違いない。
(出典:小栗虫太郎『黒死館殺人事件』)
・両者の差別はこの地上に生じた、あらゆる差別のやうに朦朧としてゐる。
(出典:芥川竜之介『文芸的な、余りに文芸的な』)
類語
・あやふや
意味:物事がはっきりしないさま。あてにならないさま。(出典:デジタル大辞泉)
・曖昧(あいまい)
意味:物事がはっきりしないこと。物事が確かでないさま。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・抽象的(ちゅうしょうてき)
意味: 頭の中だけで考えていて、具体性に欠けるさま。(出典:デジタル大辞泉)
朦朧の意味③「意識が確かでないさま。」
「朦朧」の三つ目の意味は「意識が確かでないさま。」です。
記憶や認識などが曖昧で、頭がはっきりとしない様子を意味します。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・朦朧とした意識のなかで、室内の男たちの視線が向けられるのを感じる。
(出典:松岡圭祐『千里眼 美由紀の正体 下』)
・意識はすでに朦朧とし、七実の頭の中は靄もやがかかったようになっている。
(出典:西尾維新『刀語(全12巻) 刀語 7 第七話 悪刀・鐚』)
・朦朧とした状態の中で、ふと遠くから何かがやって来るような気がした。
(出典:貴志祐介『黒い家』)
・私の朦朧とした記憶の中に、より黒い影のような祖父の姿が浮かんで来る。
(出典:外村繁『澪標』)
類語
・混濁(こんだく)
意味:意識がぼんやりしてくること。(出典:デジタル大辞泉)
・泥酔(でいすい)
意味:正体をなくすほどひどく酒に酔うこと。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・茫々(ぼうぼう)
意味:物事に対する気構えや考え方がはっきりせず、ぼんやりしているさま。(出典:精選版 日本国語大辞典)