茫然
「茫然自失」などのように使う「茫然」という言葉。
「茫然」は、音読みで「ぼうぜん」と読みます。
「茫然」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「茫然」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
茫然の意味
「茫然」には次の二つの意味があります。
1 漠然としてつかみどころのないさま。
2 「呆然(ぼうぜん)」に同じ。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
茫然の意味①「漠然としてつかみどころのないさま。」
「茫然」の一つ目の意味は「漠然としてつかみどころのないさま。」です。
意味の通り、「漠然(ばくぜん)」とほとんど同じ意味です。
具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・哀れな人間の科学はただ茫然として口をあいてこれをながめるほかはない。
(出典:寺田寅彦『映画時代』)
・米友は今、名も知れぬ一行の殿を承って、茫然として進み行くばかりです。
(出典:中里介山『大菩薩峠』)
・ハリーは茫然と立っていたが、やがて道を横切って、溝の方に駈けだした。
(出典:ニーヴン,パーネル『悪魔のハンマー〔下〕』)
・各人一様に茫然たる有様という以外に特別の不審の者はおりませんでしたね。
(出典:坂口安吾『心霊殺人事件』)
類語
・耳を疑う(みみをうたがう)
意味:思いがけないことを聞き、聞き違いかと思う。聞いたことが信じられないことにいう。(出典:デジタル大辞泉)
・模糊(もこ)
意味:ぼんやりしているさま。はっきりしないさま。(出典:デジタル大辞泉)
・漠然(ばくぜん)
意味:まとまりのないさま。ぼんやりとしてはっきりしないさま。つかまえどころのないさま。副詞的にも用いる。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・曖昧(あいまい)
意味:態度や物事がはっきりしないこと。また、そのさま。あやふや。(出典:デジタル大辞泉)
茫然の意味②「「呆然(ぼうぜん)」に同じ。」
「茫然」の二つ目の意味は「「呆然(ぼうぜん)」に同じ。」です。
気の抜けてぼんやりとするさま、というような意味で使用されます。
具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・私は何をすればよいのやら唯茫然としたまま父の顔をみつめております。
(出典:久坂葉子『落ちてゆく世界』)
・私の予想もしなかつた欠陥が眼について、ただ茫然とするより外はない。
(出典:岸田国士『テアトル・コメディイの二喜劇』)
・家にはこれと同じ物が三十冊もあると言われて、全く茫然としてしまった。
(出典:木暮理太郎『木曽駒と甲斐駒』)
・彼はこのフランスの提督ていとくが、少し疲れて茫然としているのに気がついた。
(出典:アレクサンドル・デュマ/石川登志夫訳『鉄仮面(下)』)
類語
・夢うつつ(ゆめうつつ)
意味:夢なのか現実なのか自分自身ではっきり判断できない状態。きわめておぼろげな様子。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・うつろ
意味:心のはたらきが鈍り、ぼんやりしているさま。また、声などに力がなく、頼りないさま。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・放心(ほうしん)
意味:ほかに気をとられて、また何も考えずにぼんやりすること。放神。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・自失(じしつ)
意味:われを忘れて、ぼんやりすること。茫然(ぼうぜん)とすること。気抜けすること。(出典:精選版 日本国語大辞典)