隠蔽
「隠蔽」と書いて「いんぺい」と読みます。
「隠蔽」の「隠」は、「隠す」「隠れる」。「蔽」は「ヘイ」「おおう」と読み、覆い被せるの意味があります。
「隠」と「蔽」、同様の意味を重ねた作りの言葉です。
この記事では「隠蔽」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
隠蔽の意味
隠蔽には次の意味があります。
・ある物を他の物で覆い隠すこと。見られては都合の悪い物事を隠すこと。
(出典:大辞林 第三版)
似た意味の言葉に「隠匿(いんとく)」がありますが、「隠匿」は隠してはいけないものをひそかに隠すという意味であるのに対して、「隠蔽」は都合の悪い物事を故意に隠すという意味で、微妙にニュアンスが異なります。
名詞ですが、「する」を補って「隠蔽する」とも用います。
具体的な使い方や例文は下記の通りです。
使い方・例文
・原子爆弾の威力についても、事実を隠蔽していたため、民衆は知らない。
(出典:高見 順『敗戦日記』)
・この言いかたは自己のエゴイズムを合理化し隠蔽する卑劣ないいかただ。 問題をこうたてよう。
(出典:高野悦子『二十歳の原点』)
・資産を持つ者はすべてと言ってよいほど、極端な所得の隠蔽に努力した。 徴税吏たちは熱心に努力したが、実効はあがらなかった。
(出典:佐藤大輔『皇国の守護者2 名誉なき勝利』)
・六十歳以上と十四歳以下の性は社会の闇に隠蔽され、タブー視されているのだ。そこまで考えたとき、地下鉄の方南町の駅に着いた。
(出典:柳美里『女学生の友』)
・なぜ、ある種の出来事は選択的に抑圧され、黙秘され、隠蔽されるのか。なぜ、ある出来事は記述され、ある出来事は記述されないのか。
(出典:内田樹『寝ながら学べる構造主義』)
・反対にあなた方こそ、暴力で刑事事件を隠蔽した責めを問われますぞ。この女の犯行はりっぱに暴露されているのだ。
(出典:ドストエフスキー/工藤精一郎訳『罪と罰』)