轍
「轍が残っている」などのように使う「轍」という言葉。
「轍」は、訓読みで「わだち」、音読みで「てつ」と読みます。
「轍」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「轍」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
轍の意味
「轍」には次の二つの意味があります。
1 通りすぎた車輪の跡。
2 筋道。行き方。先例。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味や使い方については下記の通りです。
轍の意味①「通りすぎた車輪の跡。」
「轍」の一つ目の意味は「通りすぎた車輪の跡。」です。
車が通り過ぎたあとに残る車輪の跡のことで、特に雪道や泥道などの比較的柔らかい路面に、その車両の進行方向に続いている、溝状の長い凹みのことを言います。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・もはや轍の跡といったものもなくなっているので、どこを走ってもいい。
(出典:井上靖『私の西域紀行(下)』)
・車輪がつけた道で、轍が二本走り、その間にこんもりと草が伸びている。
(出典:クーパー『(闇の戦い3)灰色の王』)
・地面には昔の轍のくぼみがかすかながらも、今日も明らかに見られる。
(出典:ヘディン/岩村忍訳『さまよえる湖』)
・と、雨だれの音にまじって遠くのほうに車の轍の音を聞いたように思った。
(出典:有島武郎『或る女』)
・大型トラックが何度も往復した深い轍が続いていた。
(出典:初野晴『漆黒の王子』)
轍の意味②「筋道。行き方。先例。」
「轍」の二つ目の意味は「筋道。行き方。先例。」です。
言い換えると、前人の行なったあと、先例の通りのやり方、という意味です。
車輪の跡である「轍」は、路面を凸凹にし、あとから通る車両の車輪がその凹みに囚われてしまい(はまり込んでしまい)、轍の凹みの通りにしか走れなくなることがあります。
その状況を例えた用法で、多くは「轍を踏む」という形で「同じことを繰り返してしまう」という、あまり良くない意味で使われます。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・その轍からなんとか引っ張り上げてやるのが自分の仕事ではないのか。
(出典:篠田節子『死神』)
・彼女はしかし、そこで決して姉と同じ轍を踏むわけにはいかなかった。
(出典:綾辻行人『暗黒館の殺人(上)改訂6-2-8』)
・母の轍を踏ませぬようにするには、いまがもっとも大切なときだ。
(出典:上橋菜穂子『獣の奏者 IV 完結編』)
・よくよくの心得をもって、座に就かねば、父の轍をふむことになるぞ。
(出典:柴田錬三郎『(柴錬立川文庫6) 裏返し忠臣蔵』)
・人々は、次に生まれる文明に、 自分たちの轍を踏ませたくなかったのです。
(出典:岩本隆雄『ミドリノツキ〔上〕』)