絆
「絆」は「きずな」と読み、「親子の絆」などのように用いられます。
もともとは、馬などの動物が逃げないように結びつけておく綱のことであることが、十巻本和名抄(934頃)に記されています。
かつて大災害から立ち上がるとき、この「絆」は人々の心を結ぶキーワードとしてよく用いられていました。
この記事では「絆」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
絆の意味
絆(きずな)には次の意味があります。
・人と人との断つことのできないつながり。離れがたい結びつき。
(出典:デジタル大辞林)
動物たちをつなぎとめる綱から意味が広がり、家族や友人、仲間などの結びつきを表すようになりました。
結束や連帯を「絆」と表す場合、より心情的に深いところで固く結び合ったものというニュアンスが加わります。
具体的な使い方や例文は下記の通りです。
使い方・文例
・絆を綯った人でさえしかとその端を握っている気ではなかったのだろう。 僕は怪しい絆という文字を奇縁という意味でここに使うことのできないのを深く母のために悲しむのである。
(出典:夏目漱石『彼岸過迄』)
・白雲の中から生れて来たように、世の中の絆を何も持っていない姿である。 ふと、胡桃の木の彼方を通りかけて、そこにいるお通のすがたを振り向いた。
(出典:吉川英治『宮本武蔵』)
・自分が解脱することはこの絆を断ち切って彼女を夢より醒すことでもある。そして共に真実自由な涅槃海に落着けるのである。
(出典:岡本かの子『宝永噴火』)
・だが二人の間には血のつながりとは別なもの、よりひそかな絆があった。 そう、マリア・クロスによってつながれているのだ。
(出典:モーリアック/遠藤周作訳『愛の砂漠』)
・人という群れに生きる自分は、こんな絆を望んではいけなかったのだ。 こういう関係こそが、すべての歪みの始まりだったのだから。
(出典:上橋菜穂子『獣の奏者 Ⅳ 完結編』)