眦
「眦をつり上げる」などのように使う「眦」という言葉。
「眦」は、訓読みで「まなじり」と読みます。「眥」と表記する場合もあります。
「眦」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「眦」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
眦の意味
「眦」には次の意味があります。
・目じり。(出典:デジタル大辞泉)
目の、耳に近い方の端、のことです。
「まなじり」の「ま」は、「目」が複合語の中で用いられる時の形、「な」は、「の」の意味の古い格助詞、「じり(しり)」は物の最後や末端部分を表す「しり(後・尻)」という構成になっており、つまり「まなじり」は「目の後(しり)」のということになります。
平安時代頃に「まなじり」が「まじり」となり、現代で使う「目じり」になっと言われています。
「眦」を「まじり」とも読めますが、出てくるのは古典のみで、現代では聞かれません。
また、この意味から発展して、「視線」「瞳」という意味でも用いられる場合があります。
小説などでの具体的な使い方・例文は下記の通り。
使い方・例文
・しながら、眦をあげ、崇男が残したひろい大きな傘の内をグイと見あげた。
(出典:赤江瀑『正倉院の矢』)
・佐織は最初から瞼を閉じていたが、そのうち眦に涙が光るのが見えた。
(出典:泡坂妻夫『死者の輪舞』)
・眦の紅が怒っているかのような顔に幼い凜々りりしさを与えていた。
(出典:川端康成『伊豆の踊子・禽獣』)
・引きしまって、ぼやついたところのない音声と、南方風なきれの大きい眦。
(出典:宮本百合子『風知草』)
・遠い焔(ほのお)の音や、矢さけびの方へ、眦から眸(ひとみ)をきっと向けながら云った。
(出典:吉川英治『新書太閤記』)
・其ほかにも、一人や二人は、私の行き足をなごやかな眦で見つめてゐてくれる同情者のあるを感じてゐる。
(出典:折口信夫『古代研究 追ひ書き』)
・のみならず頬の色を見る見る白くして、眦まなじりをキリキリと釣り上げた。
(出典:夢野久作『名君忠之』)
・若いとも、年経ているとも思える鋭い眦だった。
(出典:九里史生『SAO-Web-0404-第七章1』)