煽る
「前の車を煽る」などのように使う「煽る」という言葉。
「煽る」は、訓読みで「あおる」と読みます。
「煽る」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「煽る」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
煽るの意味
「煽る」には次の四つの意味があります。
1 うちわなどで風を起こす。また、風が火の勢いを強める。
2 風が物を揺り動かす。また、風を受けて物が動く。
3 おだてたりして、相手がある行動をするように仕向ける。たきつける。扇動する。
4 物事に勢いをつける。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
煽るの意味①「うちわなどで風を起こす。また、風が火の勢いを強める。」
「煽る」の一つ目の意味は「うちわなどで風を起こす。また、風が火の勢いを強める。」です。
人物などが主体となって風を起こすことです。
具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・ハンケチを煽る手の動きが止まり、男の目が静かにこちらに向けられた。
(出典:福井晴敏『終戦のローレライ(下)』)
・白い髭を生やした鼠が大きな団扇で燃えている炎を煽っている奇妙な絵だ。
(出典:高橋克彦『だましゑ歌麿』)
・同時にそれが峯子たちの部屋の空気を煽ったとでもいうようにドアが勢いよくひらかれた。
(出典:宮本百合子『今朝の雪』)
類語
・振る(ふる)
意味:からだの一部を、また物の一方の端をもって上下・左右・前後に何度も繰り返すようにして動かす。(出典:デジタル大辞泉)
・扇ぐ(あおぐ)
意味:うちわなどを動かして風を起こす。(出典:デジタル大辞泉)
・揺る(ゆる)
意味:揺り動かす。ふるい動かす。ゆすぶる。(出典:デジタル大辞泉)
煽るの意味②「風が物を揺り動かす。また、風を受けて物が動く。」
「煽る」の二つ目の意味は「風が物を揺り動かす。また、風を受けて物が動く。」です。
風が物を動かすことを意味します。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・左門の姿が消え、眼前に紙帳が、風に煽られたかのように、戦いでいた。
(出典:国枝史郎『血曼陀羅紙帳武士』)
・そこでイルマタールは嵐に煽られて七〇〇年の間波の上を浮び歩いている。
(出典:寺田寅彦『宇宙の始まり』)
・ばたばたいう音の源は、風に煽られてはためく剥がれかけた羽布だった。
(出典:水無神知宏『鋼鉄の虹 装甲戦闘猟兵の哀歌』)
類語
・はためく
意味:布や紙などが風に吹かれてはたはたと音をたてて翻る。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・翻る(ひるがえる)
意味:風になびいて揺れ動く。ひらめく。(出典:デジタル大辞泉)
・動く(うごく)
意味:ものの位置が変わる。移動する。(出典:デジタル大辞泉)
煽るの意味③「おだてたりして、相手がある行動をするように仕向ける。たきつける。扇動する。」
「煽る」の三つ目の意味は「おだてたりして、相手がある行動をするように仕向ける。たきつける。扇動する。」です。
相手の気持ちに働きかけて行動を促すことです。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・屋敷は、クリーチャーに煽られて、なかなかいい戦いぶりを見せていた。
(出典:ローリング『ハリー・ポッターシリーズ 05a ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(上)』)
・だから、あまり周りに煽られると、その気になってしまうかもしれない。
(出典:枯野瑛『銀月のソルトレージュ01 ひとつめの虚言』)
・自分で煽っておいてなんだけど、この人が遠子先輩を好きになるとかありえない。
(出典:野村美月『文学少女シリーズ15 “文学少女”と恋する挿話集4』)
類語
・煽てる(おだてる)
意味:うれしがることを言って、相手を得意にさせる。何かをさせようと、ことさらに褒める。もちあげる。(出典:デジタル大辞泉)
・激励(げきれい)
意味:はげまし元気づけること。奮起させること。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・扇動(せんどう)
意味:そそのかすこと。おだてたりあおりたてたりして、ある行動を起こすようにしむけること。(出典:精選版 日本国語大辞典)
煽るの意味④「物事に勢いをつける。」
「煽る」の四つ目の意味は「物事に勢いをつける。」です。
相手に働きかけて、気持ちや状況などを動かすことです。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・高里が会いに行って何を言っても、築城の不安を煽るだけでしかない。
(出典:小野不由美『十二国記 魔性の子』)
・これまでのところ、取り立てて出席者の関心を煽る話題は出ていなかった。
(出典:ホーガン『星を継ぐもの』)
・激しい風にたたかれる厚い雪はいつもの恐怖感をいやが上にも煽った。
(出典:ヴェルヌ/大久保和郎訳『氷海越冬譚』)
類語
・後押し(あとおし)
意味:助力すること。(出典:デジタル大辞泉)
・増長(ぞうちょう)
意味:しだいに程度がはなはだしくなること。(出典:デジタル大辞泉)
・促す(うながす)
意味:ある行為をするように仕向ける。(出典:デジタル大辞泉)