漂う
「波間を漂う」などのように使う「漂う」という言葉。
「漂う」は、訓読みで「ただよう」と読みます。
「漂う」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「漂う」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
漂うの意味
「漂う」には次の四つの意味があります。
1 空中・水面などに浮かんで揺れ動く。一つ所にとどまらずゆらゆら動いている。
2 あてもなくあちこち歩く。さまよう。
3 香りなどが風に運ばれたりしてそのあたりに満ちる。
4 ある雰囲気やけはいがそのあたりに満ちている。そのあたりに何となく感じられる。(出典:デジタル大辞泉)
「漂う」には他の意味もありますが、上記の意味で使われることがほとんどです。
それぞれの意味や使い方については下記の通りです。
漂うの意味①「空中・水面などに浮かんで揺れ動く。一つ所にとどまらずゆらゆら動いている。」
「漂う」の一つ目の意味は「空中・水面などに浮かんで揺れ動く。一つ所にとどまらずゆらゆら動いている。」です。
例えば、「クラゲが漂う」で「クラゲが水中に浮かび、ゆらゆら揺れ動いている」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・暖かい風とわからないくらいのかすかな流れとのままに、舟は漂っている。
(出典:ロラン・ロマン『ジャン・クリストフ』)
・あなたは半分になった宇宙空間に漂いながら茫然とするより他なかった。
(出典:太田健一『人生は擬似体験ゲーム』)
・恐怖の一瞬、彼の身体は宙に浮き、あてもなく漂い出すような気がした。
(出典:ディック/仁賀克雄訳『人間狩り ―ディック短編集』)
漂うの意味②「あてもなくあちこち歩く。さまよう。」
「漂う」の二つ目の意味は「あてもなくあちこち歩く。さまよう。」です。
例えば、「街中を漂う」で「街中をあてもなくさまよう」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・私は孤独の感じと闘いながら、漂うように島のほうへ歩きだした。
(出典:久生十蘭『海豹島』)
・幽の身体からくったりと力が抜けて、そのままテントの中を漂い始めた。
(出典:秋山瑞人『猫の地球儀 その2 幽の章』)
・ライトの光源は闇の中を漂い動いた挙げ句、倉庫の奥の壁際で止まった。
(出典:虚淵玄『鬼哭街』)
漂うの意味③「香りなどが風に運ばれたりしてそのあたりに満ちる。」
「漂う」の三つ目の意味は「香りなどが風に運ばれたりしてそのあたりに満ちる。」です。
例えば、「焦げたにおいが漂う」で「何かが焦げたにおいがその場に満ちている」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・おばさんのまわりには暗い部屋にいてもわかる独特の匂いが漂っている。
(出典:エディングス『ベルガリアード物語1 予言の守護者』)
・この、徐々に人の生活の匂いが漂い始める風景の変化はいつ見ても面白い。
(出典:支倉凍砂『狼と香辛料III』)
・道の真中に白く湯気の立つ溝があり、高く湯の香があたりに漂っていた。
(出典:宮本百合子『伸子』)
漂うの意味④「ある雰囲気やけはいがそのあたりに満ちている。そのあたりに何となく感じられる。」
「漂う」の四つ目の意味は「ある雰囲気やけはいがそのあたりに満ちている。そのあたりに何となく感じられる。」です。
例えば、「緊迫した空気が漂う」で「緊迫した雰囲気がそのあたりに感じられる」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・普通の仏とは違って生物の感じがあり、何か化身のような気が漂っている。
(出典:高村光太郎『回想録』)
・そしてやや滑稽な空気が漂っていたのを認めざるを得ないかも知れない。
(出典:大島亮吉『涸沢の岩小屋のある夜のこと』)
・その場所にはなにかしら邪悪な霊気が漂っているかのようだったからだ。
(出典:ラヴクラフト・ハワード・フィリップス『チャールズ・デクスター・ウォードの事件』)