暫く
「暫く雨が降る」などのように使う「暫く」という言葉。
「暫く」は、訓読みで「しばらく」と読みます。
「暫く」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「暫く」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
暫くの意味
「暫く」には次の三つの意味があります。
1 すぐではないが、あまり時間がかからないさま。少しの間。しばし。
2 時間的にある程度長く続くさま。当分。
3 一時的であるさま。仮に。 (出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
暫くの意味①「すぐではないが、あまり時間がかからないさま。少しの間。しばし。」
「暫く」の一つ目の意味は「すぐではないが、あまり時間がかからないさま。少しの間。しばし。」です。
「暫くお待ちください」で「少しの間お待ちください」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・暫く佇立したが、とても短い時間で写せそうもないので割愛して進んだ。
(出典:大下藤次郎『白峰の麓』)
・暫く進んではまた暫く休むという始末で遂には進めなくなってしまった。
(出典:河口慧海『チベット旅行記』)
・先へ登って休んでいた二人と一緒になって、私達も暫く息を入れる。
(出典:木暮理太郎『黒部川奥の山旅』)
類語
・暫時(ざんじ)
意味:すこしの間。わずかな時間。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・一時(いちじ)
意味:しばらくの間。ほんのわずかの間。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・寸陰(すんいん)
意味:わずかの時間。(出典:デジタル大辞泉)
暫くの意味②「時間的にある程度長く続くさま。当分。」
「暫く」の二つ目の意味は「時間的にある程度長く続くさま。当分。」です。
「暫くそこに住んでいた」で「ある程度長い期間そこに住んでいた」
という意味になります。
意味①より少し長い時間を指します。
具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・牧野信一の自殺した小田原の家、あの家にも暫く泊っていたことがある。
(出典:坂口安吾『青い絨毯』)
・暫く戸外へ出て見ない中に、春はどこともなく地上に搖れ立つてゐた。
(出典:久米正雄『受験生の手記』)
・暫く大阪にいて、それから又帰って来たが、兎に角この人が一番古い。
(出典:高村光太郎『回想録』)
類語
・短期(たんき)
意味:短い期間。短期間。(出典:デジタル大辞泉)
・一頻(ひとしきり)
意味:ある時を中心として、その前後のまとまった時間。しばらくの間。
(出典:精選版 日本国語大辞典)
・数刻(すうこく)
意味:2、3時間か5、6時間程度の時間。数時間。(出典:デジタル大辞泉)
暫くの意味③「一時的であるさま。仮に。」
「暫く」の三つ目の意味は「一時的であるさま。仮に。」です。
この意味の「暫く」は「その話は暫くおいておき、次の話をしよう」などのように使い、「一時的に」や「仮に」という意味で使います。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・眼の見えた以前の人は暫く措き、眼が見えなくなってから後の人の面影が知りたい。
(出典:中里介山『大菩薩峠』)
・病院では入院させたかったらしいのですが、私は入院とか手術とかが生まれつき性に合いませんし、暫く様子をみるということで取敢えず家に帰して貰いました。
(出典:樋口有介『八月の舟』)
・この叫声が余り大きかつたので、二人共暫く黙つてゐた。
(出典:森林太郎『笑』)
類語
・一旦(いったん)
意味:ひとまず。一時的に。(出典:デジタル大辞泉)
・暫定(ざんてい)
意味:はっきりそうときめるまでの間、仮にきめておくこと。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・一先ず(ひとまず)
意味:今後のことは別にして、その時点で一応の区切りをつけるさま。とりあえず。(出典:デジタル大辞泉)