時刻
「現在の時刻」などのように使う「時刻」という言葉。
「時刻」は、音読みで「じこく」と読みます。
「時刻」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「時刻」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
時刻の意味
「時刻」には次の四つの意味があります。
1 時の流れの瞬間的な一点。
2 一瞬一瞬の時を刻みながら流れてゆく、その時間。
3 ちょうどよい時。時節。時機。機会。
4 ある一定の時間。打消の語を伴って、ゆとりがなくせっぱつまった状況を表わす。(出典:精選版 日本国語大辞典)
それぞれの意味や使い方については下記の通りです。
時刻の意味①「時の流れの瞬間的な一点。」
「時刻」の一つ目の意味は「時の流れの瞬間的な一点。」です。
この「時刻」の意味をわかりやすく説明すると、「その時間」という意味があります。 例えば、「海を見に行った時刻」で「海を見に行ったその時間」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・私はK君が海へ歩み入ったのはこの時刻の前後ではないかと思うのです。
(出典:梶井基次郎『Kの昇天』)
・時刻ですか、はっきりおぼえてはいませんが、三時頃だったと思います。
(出典:平林初之輔『アパートの殺人』)
・あの時刻に、あなたをあそこへ出るようにした人物がいた筈でござろう。
(出典:坂口安吾『明治開化 安吾捕物』)
時刻の意味②「一瞬一瞬の時を刻みながら流れてゆく、その時間。」
「時刻」の二つ目の意味は「一瞬一瞬の時を刻みながら流れてゆく、その時間。」です。
例えば、「お茶の時刻が過ぎてゆく」で「お茶を飲む時間が過ぎてゆく」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・妹無事とあるのは偽りで、今夜轢死のあった時刻に妹も死んでしまった。
(出典:夏目漱石『三四郎』)
・時刻は非常に晩くなったようでもあり、またそんなでもないように思えた。
(出典:梶井基次郎『過古』)
・あんな時刻になぜラジオが鳴ってたのか、僕には見当がつきませんよ。
(出典:坂口安吾『正午の殺人』)
時刻の意味③「ちょうどよい時。時節。時機。機会。」
「時刻」の三つ目の意味は「ちょうどよい時。時節。時機。機会。」です。
例えば、「時刻を窺う」で「ちょうどよい時を窺う」という意味になります。また、「いい時刻」で「頃合い」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・都を落ちて行くものに、これほど都合のよい時刻はあるまい。
(出典:加藤道夫『なよたけ』)
・そして、その時刻が、丁度天総寺の方からこの長念寺に歩いて来るだけの時刻を隔ててやって来ている。
(出典:本田親二『□本居士』)
・もうそろそろいい時刻だね。
(出典:海野十三『少年探偵長』)
時刻の意味④「ある一定の時間。打消の語を伴って、ゆとりがなくせっぱつまった状況を表わす。」
「時刻」の四つ目の意味は「ある一定の時間。打消の語を伴って、ゆとりがなくせっぱつまった状況を表わす。」です。
この「時刻」は、「ない」などの打ち消しの言葉を使います。例えば、「ゆっくり昼食を食べる時刻もない」という文で「ゆっくり昼食を食べる時間がない」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・さもなければこんな日に、しかもこんな時刻になって来るはずがないよ。
(出典:A・C・ドイル『新潮文庫 シャーロックホームズ全集 オレンジの種五つ』)
・その時刻には、誰だって眠っていなければならない筈であった。
(出典:葉山嘉樹『生爪を剥ぐ』)
・しかも、問うにも語るにも、今はそうしている時刻の余裕すらも既にないのである。
(出典:吉川英治『宮本武蔵』)