敢えて
「敢えて言う」などのように使う「敢えて」という言葉。
「敢えて」は、訓読みで「あえて」と読みます。
「敢えて」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「敢えて」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
敢えての意味
「敢えて」には次の二つの意味があります。
1 やりにくいことを押しきってするさま。無理に。
2 特に取り立てるほどの状態ではないことを表す。必ずしも。少しも。全く。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
敢えての意味①「やりにくいことを押しきってするさま。無理に。」
「敢えて」の一つ目の意味は「やりにくいことを押しきってするさま。無理に。」です。
「敢えて人の邪魔になるようなことをする」で、「あまりやりたくはないし、気は進まないが人の邪魔になるようなことをする」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方や類語は下記の通り。
使い方・例文
・時間も人もないときに、敢えて力攻めをするのは考えものだったからだ。
(出典:井上祐美子『五王戦国志2 落暉篇』)
・私が敢えて使うこの手法は、しかし、パリ以外でも理解されるだろうか?
(出典:バルザック・オノレ・ド『ゴリオ爺さん』)
・料理は、出来たてを食うのが原則なのに、敢えてその逆を行くのである。
(出典:獅子文六『食味歳時記』)
・敢えて罠の中へ入って行くことに不安はあったが、ためらいはなかった。
(出典:上橋菜穂子『鹿の王 下』)
類語
・断行(だんこう)
意味:困難や反対を押しきって強い態度で実行すること。(出典:デジタル大辞泉)
・敢行(かんこう)
意味:おしきって事を行なうこと。また、断固として決行すること。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・敢為(かんい)
意味:物事を困難に屈しないでやり通すこと。敢行。(出典:デジタル大辞泉)
・決行(けっこう)
意味:少しぐらいの障害があっても、それを押し切って、決めたことを行なうこと。(出典:精選版 日本国語大辞典)
敢えての意味②「特に取り立てるほどの状態ではないことを表す。必ずしも。少しも。全く。」
「敢えて」の二つ目の意味は「特に取り立てるほどの状態ではないことを表す。必ずしも。少しも。全く。」です。
この場合の「敢えて」は、「敢えて〜ない」という使い方をします。意味①とは違い、「敢えてそうする必要はない」や「敢えてなにもしなかった」など、「無理に物事を行う必要がない状態」を表しています。
小説などでの具体的な使い方や類語は下記の通り。
使い方・例文
・気持ちの整理がつかない、というより、敢えてつけようともしていない。
(出典:喬林知『今日からマ王 第8巻 「天にマのつく雪が舞う!」』)
・その事に関連して、国家や社会のことを言うことは敢えてしまい。
(出典:三好十郎『俳優への手紙』)
・このことは当然であって、敢えて不思議とはしないのであります。
(出典:小川未明『『お話の木』を主宰するに当たりて宣言す』)
・こちらからは一度も敢えて直接に名を申しませんでした。
(出典:胡桃沢耕史『翔んでる警視正 平成篇1 警視正天山南路を行く』)
類語
・気がない(きがない)
意味:関心がない。気乗りがしない。(出典:デジタル大辞泉)
・気が進まない(きがすすまない)
意味:すすんでしようとは思わない。気乗りがしない。(出典:デジタル大辞泉)
・態と(わざと)
意味:意識して、また、意図的に何かをするさま。ことさら。(出典:デジタル大辞泉)
・態態(わざわざ)
意味:他のことのついでではなく、特にそのためだけに行うさま。(出典:デジタル大辞泉)