拵える
「団子を拵える」などのように使う「拵える」という言葉。
「拵える」は、訓読みで「こしらえる」と読みます。
「拵える」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「拵える」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
拵えるの意味
「拵える」には次の五つの意味があります。
1 ある材料を用いて、形の整ったものやある機能をもったものを作り上げる。また、結果として不本意なものを作ってしまう。
2 手を加えて、美しく見せるようにする。化粧したり衣装を整えたりして飾る。
3 工夫を巡らし、ないことをあるかのように見せかける。
4 手を尽くして、必要なものを整える。用意する。 5 友人・愛人などを作る。(出典:デジタル大辞泉)
「拵える」には他の意味もありますが、上記の意味で使うことがほとんどです。
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
拵えるの意味①「ある材料を用いて、形の整ったものやある機能をもったものを作り上げる。また、結果として不本意なものを作ってしまう。」
「拵える」の一つ目の意味は「ある材料を用いて、形の整ったものやある機能をもったものを作り上げる。また、結果として不本意なものを作ってしまう。」です。
この場合の「拵える」をわかりやすく言うと、「材料を使って料理や物を作る」という意味があります。また、「たんこぶを拵える」で、「予期せぬものを作る」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・そういう婦人が毎日家庭の料理を拵えると思えばその家人は実に幸福だね。
(出典:村井弦斎『食道楽』)
・あれほどの機械を拵えるなど、世界広しといえども田中どのの他におりますまい。
(出典:高橋克彦『火城』)
・綿は綿の木のどんな所をどうして拵えるかも解し得ない。
(出典:夏目漱石『道楽と職業』)
類語
・作る(つくる)
意味:材料・原料・素材などを用いたり、それに手を加えたりして、まとまりのあるものや意味のあるものに仕上げる。(出典:デジタル大辞泉)
・作製(さくせい)
意味:物を作ること。また、書類、計画などを作りあげること。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・製造(せいぞう)
意味:原料に手を加えて製品にすること。(出典:デジタル大辞泉)
拵えるの意味②「手を加えて、美しく見せるようにする。化粧したり衣装を整えたりして飾る。」
「拵える」の二つ目の意味は「手を加えて、美しく見せるようにする。化粧したり衣装を整えたりして飾る。」です。
この場合の「拵える」は、「人や物を美しく整える」という意味で使われます。「化粧を拵える」で、「化粧をする」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・その上清は湯の戻りに髪結の所へ回って頭を拵えるはずだそうであった。
(出典:夏目漱石『門』)
・舞台前面には波幕を一枚張り、後ろは砂地で、海の方から陸に対している様子に拵える。
(出典:藤野古白『人柱築島由来』)
・失礼のないように頭を拵えろということだ。
(出典:宇江佐真理『髪結い伊三次捕物余話 紫紺のつばめ』)
類語
・整える(ととのえる)
意味:乱れのないように形をきちんとする。(出典:デジタル大辞泉)
・整髪(せいはつ)
意味:髪を刈って形を整えること。また、乱れた髪を整えること。理髪。(出典:デジタル大辞泉)
・装う(よそおう)
意味:身なりや外観を整える。また、美しく飾る。(出典:デジタル大辞泉)
拵えるの意味③「工夫を巡らし、ないことをあるかのように見せかける。」
「拵える」の三つ目の意味は「工夫を巡らし、ないことをあるかのように見せかける。」です。
この場合の「拵える」をわかりやすく言うと、「嘘がバレないように準備をした上で、嘘をつく」という意味があります。「儲け話を拵える」で、「嘘がバレないように準備をした上で、儲け話をする」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・「鼠の顔」の謎を拵えるというので、まず鼠に因むものはないか考えた。
(出典:海野十三『軍用鼠』)
・そして自分で自分に口実を拵えるために、片山さんの気持に、あなた方の気持に、いろんな疑いを挟んでみたのです。
(出典:豊島与志雄『野ざらし』)
・振り返った九兵衛は白目を剥いておどけた顔を拵える。
(出典:宇江佐真理『髪結い伊三次捕物余話 さんだらぼっち』)
類語
・嘘(うそ)
意味:事実でないこと。また、人をだますために言う、事実とは違う言葉。(出典:デジタル大辞泉)
・芝居を打つ(しばいをうつ)
意味:人をだまそうとして作り事をしたり言ったりする。(出典:デジタル大辞泉)
・工作(こうさく)
意味:ある目的を達するために、前もって他に働きかけたり、計画をめぐらしたりして下準備すること。(出典:デジタル大辞泉)
拵えるの意味④「手を尽くして、必要なものを整える。用意する。」
「拵える」の四つ目の意味は「手を尽くして、必要なものを整える。用意する。」です。
「大学へ入る学費を拵える」で、「大学へ入るのに必要な学費をどうにかして用意する」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・けれどもまだ自分で余所行の着物を拵えるというほどの分別は出なかったのです。
(出典:夏目漱石『こころ』)
・いわゆる理想に富んだ少数の学者を拵えるということはよろしく大学院でやるがよい。
(出典:松本清張『小説東京帝国大学(下)』)
・その金を拵えるのが容易ではないのだと内心呟いていたが。
(出典:宇江佐真理『髪結い伊三次捕物余話 幻の声』)
類語
・用意(ようい)
意味:前もって必要なものをそろえ、ととのえておくこと。したく。(出典:デジタル大辞泉)
・準備(じゅんび)
意味:物事をする前に、あらかじめ必要なものをそろえたり態勢を整えたりして用意をすること。(出典:デジタル大辞泉)
・揃える(そろえる)
意味:必要なもの、あるべきものを集める。欠けたところがないようにする。(出典:デジタル大辞泉)
拵えるの意味⑤「友人・愛人などを作る。」
「拵える」の五つ目の意味は「友人・愛人などを作る。」です。
この場合の「拵える」は、「他人と関係を作る」という意味があります。「学校で友人を拵える」で、「学校で友人を作る」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・何も男を拵えるのなら、浪花節語りには限らないものを。
(出典:芥川竜之介『一夕話』)
・いや女を拵えたの、こういう悪事を働いて居ったなぞというて居る人もあるけれども、私は実に自分ながら女を拵える位の罪悪人であるから、人の罪悪を見ることには実に鋭い。
(出典:河口慧海『チベット旅行記』)
・亜米利加は何のために大いに普通教育を盛んにしているかというと、即ち良国民を拵えることがその目的である、能く国法を遵奉する国民を造るのである。
(出典:新渡戸稲造『教育の目的』)
類語
・関係(かんけい)
意味:人と人との間柄。また、縁故。(出典:デジタル大辞泉)
・間柄(あいだがら)
意味:互いの関係。付き合い。交際。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・交際(こうさい)
意味:人と人とが互いに付き合うこと。まじわり。(出典:デジタル大辞泉)