情緒
「情緒豊かな作品」などのように使う「情緒」という言葉。
「情緒」は、「じょうちょ」または「じょうしょ」と読みます。
よく読まれる「じょうちょ」は慣用読みであり、正式には「じょうしょ」と読みます。
「情緒」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「情緒」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
情緒の意味
「情緒」には次の二つの意味があります。
1 事に触れて起こるさまざまの微妙な感情。また、その感情を起こさせる特殊な雰囲気。
2 「情動」に同じ。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
情緒の意味①「人にある感慨をもよおさせる、その物独特の味わい。また、物事に触れて起こるさまざまな感慨。」
「情緒」の一つ目の意味は「人にある感慨をもよおさせる、その物独特の味わい。また、物事に触れて起こるさまざまな感慨。」です。
「情緒」は、その感情を起こさせる独特の雰囲気、またはその感情を指します。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・ 長くわたくしが巴里パリーの空を忘れ得ぬのもこの情緒のなすところであろう。
(出典:永井荷風『草紅葉』)
・米海軍・自衛隊の基地が存在し 異国情緒溢れる街として発展している。
(出典:きゃんでぃそふと『つよきすACT A』)
・京都へくると、また京都らしい情緒をその名称の中にたたえていて嬉しい。
(出典:上村松園『髷』)
・都の公卿ほどな風流でも贅でもないが、そんな情緒が彼は好きなのである。
(出典:吉川英治『私本太平記』)
類語
・風情(ふぜい)
意味:ありさま。おもむき。ふぜい。(出典:大辞林 第三版)
・雰囲気(ふんいき)
意味:その場やそこにいる人たちが自然に作り出している気分。また、ある人が周囲に感じさせる特別な気分。ムード。(出典:デジタル大辞泉)
・佇まい(たたずまい)
意味:立っているようす。また、そこにあるもののありさま。そのもののかもし出す雰囲気。(出典:デジタル大辞泉)
・オーラ
意味:人体から発散される霊的なエネルギー。転じて、ある人や物が発する、一種独得な霊的な雰囲気。(出典:デジタル大辞泉)
情緒の意味②「「情動」に同じ。」
「情緒」の二つ目の意味は「「情動」に同じ。」です。
※「情動」の意味は、下記”類語”に記載
元々は①の意味でしたが、「哲学字彙」(1881年)に英語 emotion の訳として記載され、心理学用語として定着しました。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・要請されるものは、あらゆる意味における一般的情緒の安定性である。
(出典:光瀬龍『墓碑銘二〇〇七年』)
・ほとんど情緒不安定で、何を泣いているのか自分でもよくわからなかった。
(出典:谷瑞恵『伯爵と妖精 第05巻 呪いのダイヤに愛をこめて』)
・ある特殊な情緒に動いている人間の顔などは、モデルに頼ることができぬ。
(出典:和辻哲郎『院展遠望』)
・表情が見えないことで、逆に情緒豊かに見えるというのも変な子だ。
(出典:西尾維新『憑物語』)
類語
・情動(じょうどう)
意味:感情のうち、急速にひき起こされ、その過程が一時的で急激なもの。怒り・恐れ・喜び・悲しみといった意識状態と同時に、顔色が変わる、呼吸や脈搏みやくはくが変化する、などの生理的な変化が伴う。情緒。(出典:デジタル大辞泉)
・感情(かんじょう)
意味:物事に感じて起こる気持ち。外界の刺激の感覚や観念によって引き起こされる、ある対象に対する態度や価値づけ。快・不快、好き・嫌い、恐怖、怒りなど。(出典:デジタル大辞泉)
・気持ち(きもち)
意味:物事に接したときに生じる、感じや心の中の思い。 (出典:大辞林 第三版)
・感慨(かんがい)
意味:心に深く感じて、しみじみとした気持ちになること。また、その気持ち。(出典:デジタル大辞泉)