寂寥
「寂寥」と書いて「せきりょう」と読みます。「じゃくりょう」とも。
「寂しい」という言葉はよく使いますが、「寂寥」は普段使いの言葉ではないですね。
「寥(りょう)」には「寂しい」という意味に、「空虚」「がらんとして広い」などの意味が加わります。
寂しさが二つ重なったこの言葉、文字を見ているだけでもさびしさがつのるようです。
この記事では「寂寥」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
寂寥の意味
寂寥には次の意味があります。
・ものさびしいこと。ひっそりしていること。また、そのさま。
(出典:精選版 日本国語大辞典)
単に「寂しい」というだけではなく、空虚さ、虚しさをともなった感情や様子を表し、
心情でいえば「心にぽっかり穴が空いた」ような状況です。
類義語に「寂寞(せきばく)」「寂寂(じゃくじゃく)」などがあります。
具体的な使い方や例文は下記の通りです。
使い方・例文
・二十歳くらいでは、人生の寂寥とか生きることの孤独などはわかりません。 今読むと寂寥ばかり感じます。
(出典:安野光雅/藤原正彦『世にも美しい日本語入門』)
・私の借りている丘上の家は、夜は寂寥として、周囲に虫の音が盛んである。 時々は何処からかしら、ポンポンと太鼓の音が聞えて来る。
(出典:正宗白鳥『軽井沢にて』)
・そう思うと同時に、思いがけない寂寥の思いが胸に溢れてきたのであった。 お政を帰したことが、取り返しのつかないことだったように思われてきた。
(出典:藤沢周平『回天の門』)
・そう思うと恐怖のような寂寥感のような気持が身体を貫いて過ぎる。阿部君、武智君は琉球に、高島君は濠北にいる。
(出典:伊藤整『太平洋戦争日記(三)』)
・彼の寂寥感は天皇との接触が切れたことにあった。
(出典:保阪正康『東條英機と天皇の時代(下) 日米開戦から東京裁判まで』)
・この古都には若い人々の肺には重苦しくて寂寥だけの空気があった。これを撥ね除け攪き壊すには極端な反撥が要った。
(出典:岡本かの子『食魔』)