べからず
「立ち入るべからず」などのように使う「べからず」という言葉。
「べからず」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「べからず」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
べからずの意味
「べからず」には次の四つの意味があります。
1(文末に用いて)禁止を表す。…してはいけない。…するな。
2 (「ざるべからず」の形で)指示や命令を強調する意を表す。…せよ。
3 不可能を表す。…できない。
4 当然の意の打消しを表す。…するはずがない。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
べからずの意味①「(文末に用いて)禁止を表す。…してはいけない。…するな。」
「べからず」の一つ目の意味は「(文末に用いて)禁止を表す。…してはいけない。…するな。」です。
一休さんなどで有名な「この橋、渡るべからず」の使用法がこれにあたります。
具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・形の礼も軽んずべからず、然れども心の礼のなお一層重き事を思うべし。
(出典:村井弦斎『食道楽』)
・僕が夢を一概に迷信として排斥すべからずといったのもこれがためである。
(出典:新渡戸稲造『自警録』)
・もしこれ、古書に出でたるものなれば、その事実疑うべからずとするか。
(出典:井上円了『妖怪学』)
類語
・不可(ふか)
意味:いけないこと。よくないこと。可と認めないこと。また、そのさま。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・禁止(きんし)
意味:ある行為を行わないように命令すること。(出典:デジタル大辞泉)
・規制(きせい)
意味:規則に従って物事を制限すること。(出典:デジタル大辞泉)
べからずの意味②「(「ざるべからず」の形で)指示や命令を強調する意を表す。…せよ。」
「べからず」の二つ目の意味は「(「ざるべからず」の形で)指示や命令を強調する意を表す。…せよ。」です。
意味にある通り「ざるべからず」の形で使用し、「知らざるべからず」だと知らないことを禁止するということになり、知っておきなさいという命令になります。
具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・防者は皆打者の球は常に自己の前に落ち来る者と覚悟せざるべからず。
(出典:正岡子規『ベースボール』)
・凡て物は極端に走るは可なれどその結果の有効なる程度に止めざるべからず。
(出典:正岡子規『墨汁一滴』)
・もしこれを商業にありとするときは、商業の本を知らざるべからず。
(出典:井上円了『欧米各国 政教日記』)
類語
・命令(めいれい)
意味:行なうように言いつけること。また、その内容。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・指示(しじ)
意味:さしずすること。命令。(出典:デジタル大辞泉)
・いけない
意味:その行為や状態が規則などで許されていないことを表す。(出典:デジタル大辞泉)
べからずの意味③「不可能を表す。…できない。」
「べからず」の三つ目の意味は「不可能を表す。…できない。」です。
「及ぶべからず」では「及ばない」という不可能を表す意味で使用されます。
具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・舒事家としては知らず、写実家としての彼の技倆は紅葉に及ぶべからず。
(出典:北村透谷『情熱』)
・この歯とこの顔色とは三四郎にとって忘るべからざる対照であった。
(出典:夏目漱石『三四郎』)
・男子たる者は金持のムコを望むべからず、という規則があるわけではない。
(出典:坂口安吾『安吾人生案内』)
類語
・不可能(ふかのう)
意味:できないこと。可能でないこと。また、そのさま。(出典:精選版 日本国語大辞典)
べからずの意味④「当然の意の打消しを表す。…するはずがない。」
「べからず」の四つ目の意味は「当然の意の打消しを表す。…するはずがない。」です。
「相違あるべからず」で「相違あるはずがない」という意味となり否定の意味をあらわすのに使用します。
具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・しかれども文学の標準は各体において各地において相異あるべからず。
(出典:正岡子規『俳諧大要』)
・これによりてこれをみれば、さらに他に考うべき原因なくんばあるべからず。
(出典:井上円了『妖怪学』)
・本来醜美は自身の内に存するものにして、毫末も他に関係あるべからず。
(出典:福沢諭吉『日本男子論』)
類語
・否(いや)
意味:自分が言ったこと、考えていたことを取り消すときに用いる語。(出典:デジタル大辞泉)
・訳が無い(わけがない)
意味:はずがない。道理がない。(出典:デジタル大辞泉)
・打消し(うちけし)
意味:そうではないと言うこと。否定。(出典:デジタル大辞泉)