しがらみ
「世間のしがらみ」などと使われるのを、耳にしたことがあるのではないでしょうか。
思うように行動できないようなときに使われる言葉ですが、もともとはそうしたネガティブな言葉ではありませんでした。
この記事では「しがらみや使い方について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
しがらみの意味
しがらみには二つの意味があります。
1 水の勢いを弱めるため、川の中に杭くいを一定の距離に打ち並べ、柴しばや竹などをからみつけたもの。
2 まとわりついて、引き止めるもの。関係を絶ちがたいもの。(出典:大辞林 第三版)
それぞれの意味については下記の通りです。
しがらみの意味①「水の勢いを弱めるため、川の中に杭くいを一定の距離に打ち並べ、柴しばや竹などをからみつけたもの」
しがらみの一つ目の意味は、「水の勢いを弱めるため、川の中に杭くいを一定の距離に打ち並べ、柴しばや竹などをからみつけたもの」です。
「柵」や「笧」と書いて「しがらみ」。川などに設置して、水の勢いをコントロールするために使われていました。
使い方・例文
・よろしう思はんことにてだに、涙とまるまじきを、まして、袖のしがらみせきあへぬまで
(出典:源氏物語)
・山川に風のかけたるしがらみは 流れもあへぬ紅葉なりけり
(出典:古今集)
・二の河の落ちあひに大木をきってさかもぎにひき、しがらみを夥しうかきあげたれば
(出典:平家物語)
しがらみの意味② 「まとわりついて、引き止めるもの。関係を絶ちがたいもの」
しがらみの二つ目の意味は、「まとわりついて、引き止めるもの。関係を絶ちがたいもの」です。
①の意味から転じて、人間関係や損得勘定の兼ね合いから、こうありたいという思いや行動を阻むものという使われ方をするようになりました。
使い方・例文
・多分それで俗世のしがらみから一時解き放ち、俺に何かをさせようとしたのだろう。
(出典:半村良『邪神世界』)
・日常というしがらみから明確に切れた世界で、全員が等しく機能しなければならない。肌の色など、そのことになんの関係もない。
(出典:片岡義男『日本語の外へ(上)』)
・死ぬときくらい人のしがらみや煩わしさから解放されたい。
(出典:灰谷健次郎『アメリカ嫌い』)
・どだい、年齢を重ねてからの恋というものは、数々のしがらみの上にしか成立しない。
(出典:小池真理子『虚無のオペラ』)
・我慢して相手になってやってくれ。恋と情けのしがらみに、とか何とかいうのはここのことだ。
(出典:岡本綺堂『半七捕物帳』)