鳥なき里の蝙蝠
「鳥なき里の蝙蝠を思い起こす」などのように使う「鳥なき里の蝙蝠」という言葉。
「鳥なき里の蝙蝠」は、訓読みで「とりなきさとのこうもり」と読みます。
「鳥なき里の蝙蝠」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「鳥なき里の蝙蝠」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
鳥なき里の蝙蝠の意味
「鳥なき里の蝙蝠」には次の意味があります。
・すぐれた者や強い者のいない所で、つまらない者がいばることのたとえ。(出典:デジタル大辞泉)
由来は、鳥がいない場所では、蝙蝠(こうもり)ですら鳥として扱われ、気取っているように見えるからです。
類義語には「鼬(いたち)なき間の貂(てん)誇り」、「鷹(たか)がいないと雀(すずめ)が王する」などがあります。
小説などでの具体的な使い方・例文は下記の通り。
使い方・例文
・その中でも二、三名を成す者もないではないが、それは鳥なき里の蝙蝠に過ぎない。
(出典:北大路魯山人『陶磁印六顆を紹介する』)
・鳥なき里の蝙蝠とかで、自分以上な者はないと、何ともかとも、手のつけられん小伜じゃ。
(出典:吉川英治『新・水滸伝』)
・お弟子も大分来てくれるようになり、私は昼間は箏を教えて、夜は鳥なき里のこうもりとでも言おうか、私の下手な尺八をおじさん達に教えていた。
(出典:宮城道雄『私の若い頃』)
・立居振舞が如何にも大風で、鳥なき里のこうもりの人望を一身に集めて居る医者は、ゆっくりゆっくり、亀の尾を打った拍子にひどく脳に響いて熱が出たのだからそう大した事はないと云って下熱剤を置いて行ってしまった。
(出典:宮本百合子『栄蔵の死』)
・赤城山上は、いまや、鳥なき里の蝙蝠の跳梁の観を呈していた。
(出典:柴田錬三郎『(柴錬立川文庫4) 忍者からす』)
・心敬の「さればこそ」の句の如きは鳥なき里の蝙蝠とやいはん。
(出典:正岡子規『古池の句の弁』)