堪能
比較的よく使われる言葉ですが、実はなかなかややこしい言葉でもあります。
読み方は「かんのう」「たんのう」。現代では「たんのう」の方が一般的ではないでしょうか。
意味も二つありますが、その二つは実は全く別の成り立ちの「別の言葉」だからなのです。
この記事では「堪能」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
堪能の意味
堪能には二つの意味があります。
1 十分に満足すること。 気が済むこと。納得すること。
2 技芸・学問などにすぐれているさま。
(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味や使い方については下記の通りです。
堪能の意味① 「十分に満足すること。 気が済むこと。納得すること」
堪能の一つ目の意味は「十分に満足すること。 気が済むこと。納得すること」です。
「足りる」の古語「た(足)んぬ」の音変化。「堪能」は当て字になります。
使い方・例文
・よい映画を堪能したあとの、溜息の出るような感動は少しもなかった。
(出典: 松本清張『波の塔(上))
・わしは、まだ生れてから一度も堪能しなかったものが一つあるだ。
(出典:スタインベック/大久保康雄訳『怒りの葡萄』)
・二人の才能を通訳同士の仲間内だけで堪能していたのでは勿体ない。
(出典:米原万里『ガセネッタ&シモネッタ』)
・東寺で天部・明王を堪能した後、私達は同じく京都の三十三間堂を目指す。
(出典:柴門ふみ『ぶつぞう入門(上)』)
堪能の意味② 「技芸・学問などにすぐれているさま」
堪能の二つ目の意味は「技芸・学問などにすぐれているさま」です。
本来は仏語で、「よく堪え忍ぶ能力」という意味の「堪能(かんのう)」。
そこから派生して、すぐれた能力などの意味を持つようになりましたが、①の「たんのう」に「堪能」の字が当てられたため、混同が生じ、やがてこちらも「たんのう」として慣用読みが定着したものです。
使い方・例文
・話がどう展開しても対応しきれるほど英語が堪能であるわけではない。
(出典:山際淳司『ニューヨークは笑わない』)
・語学に堪能な彼らは冊封使たちの通事や世話をする仕事に従事している。
(出典:池上永一『テンペスト1 若夏の巻』)
・彼女は語学が堪能なので、異邦人はすべて彼女の担当ということである。
(出典:天藤真『大誘拐』)
・日本人の場合、語学が堪能で、というところにちょっと問題がありそうだ。
(出典:稲垣美晴『フィンランド語は猫の言葉』)