ほとぼり
「ほとぼりが冷めた頃」などのように使う「ほとぼり」という言葉。
「ほとぼり」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「ほとぼり」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
ほとぼりの意味
「ほとぼり」には次の三つの意味があります。
1 さめきらないで残っている熱。余熱。
2 熱した感情の余勢。興奮の余波。
3 事件などに関して、事後に引き続いてもつ世間の注目や関心。 (出典:精選版 日本国語大辞典)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
ほとぼりの意味①「さめきらないで残っている熱。余熱。」
「ほとぼり」の一つ目の意味は「さめきらないで残っている熱。余熱。」です。
「ほとぼりの残った砂」などのように、熱が冷めきらない状態を意味します。
なお、「ほとぼり」は漢字で「熱」と書きます。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・砂の中に指を入れてみると、表面はひやりとしていたが、中の方にはまだ昼のほとぼりが残っていた。
(出典:横溝正史『蔵の中・鬼火』)
・道を染めている昼間のほとぼりはなおさらその感じを強くした。
(出典:梶井基次郎『冬の蠅』)
・空は見るから涼しげであるが一日照りつけた太陽のほとぼりはまだ蒸してどこの蔭へ行つても怺へられぬ程である。
(出典:長塚節『芋掘り』)
類語
・余熱(よねつ)
意味:さめきらないで残っている熱。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・潜熱(せんねつ)
意味:内に潜んでいる熱。(出典:デジタル大辞泉)
・温もり(ぬくもり)
意味:あたたかみ。ぬくみ。(出典:デジタル大辞泉)
ほとぼりの意味②「熱した感情の余勢。興奮の余波。」
「ほとぼり」の二つ目の意味は「熱した感情の余勢。興奮の余波。」です。
この意味では人の感情の高ぶりが冷め切らない様子を表します。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・情事のほとぼりをおさめてバスルームからでてきた。
(出典:渡辺淳一『ひとひらの雪(下)』)
・ほとぼりをさましてから素知らぬ顔で小田切家にまた現れてくるに相違ない。
(出典:大倉燁子『情鬼』)
類語
・高ぶり(たかぶり)
意味:高ぶること。興奮すること。(出典:デジタル大辞泉)
・血が騒ぐ(ちがさわぐ)
意味:気持ちが高ぶって、じっとしていられなくなる。心がおどる。(出典:デジタル大辞泉)
・滾る(たぎる)
意味:激する気持ちが盛んにわきおこる。わきあがる。(出典:デジタル大辞泉)
ほとぼりの意味③「事件などに関して、事後に引き続いてもつ世間の注目や関心。」
「ほとぼり」の三つ目の意味は「事件などに関して、事後に引き続いてもつ世間の注目や関心。」です。
一般的に「ほとぼりが冷める」という表現で、この意味合いで使われることが最も多いです。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・事件のほとぼりがさめないうちだったから、人々は、姉に同情する。
(出典:中上健次『岬』)
・ほとぼりのさめた頃になって彼は得意そうに我々に告白した。
(出典:福永武彦『夢みる少年の昼と夜』)
・南の事件のほとぼりが冷めた頃を見計らい、殺すつもりに違いない。
(出典:新堂冬樹『忘れ雪』)
・外国で数年暮らしてほとぼりのさめた時分に帰ってきましょう。
(出典:横溝正史『幻の女』)
・多くは姓を変えるか、後年になってほとぼりが冷めて復姓した者もいただろう。
(出典:内田康夫『贄門島(にえもんじま)上』)
類語
・波紋(はもん)
意味:次々と周囲に動揺を伝えていくような影響。(出典:デジタル大辞泉)
・名残(なごり)
意味:ある事柄が過ぎ去ったあとに、なおその気配や影響が残っていること。また、その気配や影響。(出典:デジタル大辞泉)
・余波(よは)
意味:ある事柄が終わったあとも、なおおよぼす影響。(出典:精選版 日本国語大辞典)