味わう
「苦痛を味わう」などのように使う「味わう」という言葉。
「味わう」は、訓読みで「あじわう」と読みます。
「味わう」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「味わう」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
味わうの意味
「味わう」には次の三つの意味があります。
1 飲食物を口に入れて、そのうまみを十分に感じとる。味を楽しむ。
2 物事のおもしろみや含意を考えて、感じとる。玩味する。
3 身にしみて経験する。体験する。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
味わうの意味①「飲食物を口に入れて、そのうまみを十分に感じとる。味を楽しむ。」
「味わう」の一つ目の意味は「飲食物を口に入れて、そのうまみを十分に感じとる。味を楽しむ。」です。
言い換えると、口に入れてその味をしっかり感じとることを言います。
ただ単に咀嚼をして飲み込むことではなく、じっくりと口の中で味を楽しむ様子を表しています。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・最高級の味は味わえないかもしれないがそこそこのものはあるだろう。
(出典:阿智太郎『僕の血を吸わないで2』)
・ウロンスキイは、家庭生活というものを一度も味わったことがなかった。
(出典:トルストイ/中村白葉訳『アンナ・カレーニナ(上)』)
・赤ん坊だったころ味わった味を思い出すかと思ったけれど、だめだった。
(出典:クロウリー『エンジン・サマー』)
類語
・賞味する(しょうみする)
意味:食べ物のおいしさをよく味わって食べること。(出典:デジタル大辞泉)
・噛み締める(かみしめる)
意味:よくかんで味わう。(出典:デジタル大辞泉)
・噛み分ける(かみわける)
意味:食物をよくかんで味の違いを区別する。(出典:デジタル大辞泉)
味わうの意味②「物事のおもしろみや含意を考えて、感じとる。玩味する。」
「味わう」の二つ目の意味は「物事のおもしろみや含意を考えて、感じとる。玩味する。」です。
簡単に言い換えると、物事のよさや意味をしっかりと理解し、感じることです。
この意味の場合、文学や芸術作品などに対して用いられることが多くあります。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・色をも香をも深く味わえる人にしか味わうことはできないだろうから。
(出典:大岡信『名句歌ごよみ[春]』)
・しかしこのヘルンのつむじ曲がりの言葉の中には味わうべき何かはある。
(出典:寺田寅彦『人の言葉——自分の言葉』)
・彼等はその言葉の深い美と真を味わう前に危険だと考えました。
(出典:島田清次郎『地上』)
類語
・噛み締める(かみしめる)
意味:物事の味わい、深い意味などを十分に感じ取る。(出典:デジタル大辞泉)
・玩味(がんみ)
意味:言葉や文章などの表している意味や内容などを、よく理解して味わうこと。(出典:デジタル大辞泉)
・享受(きょうじゅ)
意味:受け入れて自分のものとすること。受け入れて、味わい楽しむこと。(出典:デジタル大辞泉)
味わうの意味③「身にしみて経験する。体験する。」
「味わう」の三つ目の意味は「身にしみて経験する。体験する。」です。
言い換えると、実際に経験して楽しさや苦しさなどの思いを十分に知り、印象に残すことを言います。
逆に言えば、印象に残らない、ただ単に経験しただけのことを「味わう」とは言いません。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・かれに触れたい、もうこれ以上は苦痛を味わわないよう守ってやりたい。
(出典:ヴォンダ・マッキンタイア/斉藤伯好訳『宇宙大作戦 スター・トレック3/ミスター・スポックを探せ!』)
・それが彼の床屋に行って味わう不思議な楽しみの唯一つのものであった。
(出典:なだいなだ『クレージイ・ドクターの回想』)
・私は秘密と云う物の面白さを、子供の時分からしみじみと味わって居た。
(出典:谷崎潤一郎『秘密』)
類語
・肌で感じる(はだでかんじる)
意味:実際に見聞きしたり体験したりして感じとる。(出典:デジタル大辞泉)
・骨身に染みる(ほねみにしみる)
意味:体のしんまで感じる。嬉しさや苦しさを深く心身に感ずる。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・思い知る(おもいしる)
意味:ある物事を身に染みて理解する。なるほどと悟る。(出典:デジタル大辞泉)