是非
「是非とも」などのように使う「是非」という言葉。
「是非」は、音読みで「ぜひ」と読みます。
「是非」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「是非」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
是非の意味
「是非」には次の五つの意味があります。
1 是と非。正しいことと正しくないこと。また、正しいかどうかということ。
2 物事のよしあしを議論し判断すること。批評すること。
3 どんな困難も乗り越えて実行しようとするさま。どうあっても。きっと。
4 心をこめて、強く願うさま。なにとぞ。
5 ある条件のもとでは必ずそうなると判断できるさま。必ず。きまって。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
是非の意味①「是と非。正しいことと正しくないこと。また、正しいかどうかということ。」
「是非」の一つ目の意味は「是と非。正しいことと正しくないこと。また、正しいかどうかということ。」です。
名詞としての用法で、漢字の意味の通り、正しいという意味の「是」と、正しくないという意味の「非」を合わせて、正しいことと正しくないこと、という意味になります。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・是非を超えた最後の手段として離婚は認めなければなりません。
(出典:宮本百合子『心ひとつ』)
・すると、その理由の是非はともかくとして、とにかく納得が行くんだけど。
(出典:三好十郎『好日』)
・今この結論の是非はともかくとしてその根拠にはなお困難がありはせぬかと思われる。
(出典:戸坂潤『物理的空間の成立まで』)
類語
・正否(せいひ)
意味:正しいことと正しくないこと。正と不正。(出典:デジタル大辞泉)
・当否(とうひ)
意味:道理に合うことと合わないこと。(出典:デジタル大辞泉)
・善し悪し・良し悪し(よしあし)
意味:よいことと悪いこと。よいか悪いか。(出典:デジタル大辞泉)
是非の意味②「物事のよしあしを議論し判断すること。批評すること。」
「是非」の二つ目の意味は「物事のよしあしを議論し判断すること。批評すること。」です。
こちらも名詞で、ある物事に対して、それが正しいことなのか間違ったことなのかを判断することを言います。
多くの場合「是非する」の形で用いられます。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・彼は又彼自身が自分に加へたと殆んど同じ言葉で彼を是非する批評を見た。
(出典:阿部次郎『三太郎の日記 第二』)
・この中心的な態度を理解することが出來ずに、彼を是非するのは全然間違つてゐることであつた。
(出典:阿部次郎『三太郎の日記 第二』)
・活字で読む場合の感じだけで是非するわけには行かない。
(出典:柴田宵曲『古句を観る』)
類語
・批判(ひはん)
意味:良し悪し、可否について論ずること。(出典:)
・批評(ひひょう)
意味:物事の是非・善悪・正邪などを指摘して、自分の評価を述べること。(出典:デジタル大辞泉)
・評論(ひょうろん)
意味:物事の価値・善悪・優劣などを批評し論じること(出典:デジタル大辞泉)
是非の意味③「どんな困難も乗り越えて実行しようとするさま。どうあっても。きっと。」
「是非」の三つ目の意味は「どんな困難も乗り越えて実行しようとするさま。どうあっても。きっと。」です。
副詞として、事情がどうあろうとも必ずそうしたい、という行為(動詞)を修飾する言葉です。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・自分はその日の午後に是非片づけなくてはならない用事を控ひかえていた。
(出典:夏目漱石『永日小品』)
・そして、その男がどんな顏形をしてゐるのか是非一度は見たくなつた。
(出典:正宗白鳥『孫だち』)
・私はたゞしようと思ふことは是非しなくちやならないと思つてるばかりです。
(出典:島村抱月『人形の家』)
類語
・努めて(つとめて)
意味:できるだけ努力をして。なんとか骨を折って。(出典:デジタル大辞泉)
・出来るだけ(できるだけ)
意味:できる範囲のことはすべて。できる限界まで。(出典:デジタル大辞泉)
・成る可く(なるべく)
意味:できる限り。できるだけ。なるたけ。(出典:デジタル大辞泉)
是非の意味④「心をこめて、強く願うさま。なにとぞ。」
「是非」の四つ目の意味は「心をこめて、強く願うさま。なにとぞ。」です。
こちらも副詞で、ある行為がなされることを強く願う様を表します。
自分が行為を行うのではなく、他者が行うことを願っている場合に用いられます。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・それで二夫人に「是非近く東京へ一度来て下さい」と繰り返しつつ云つた。
(出典:与謝野寛『満蒙遊記』)
・これはいやでも私の方で是非奥さんに聴いていただきたいのです。
(出典:夏目漱石『明暗』)
・是非貴方にさし上げてくれと親爺がくれぐれも申しおいた事なんですから。
(出典:薄田泣菫『茶話』)
類語
・必ずや(かならずや)
意味:まちがいなく。きっと。かならず。(出典:デジタル大辞泉)
・どうか
意味:心から丁重に頼み込む気持ちを表す。どうぞ。なにとぞ。(出典:デジタル大辞泉)
・達て(たって)
意味:無理を承知で強く要求・希望するさま。是非とも。どうあっても。(出典デジタル大辞泉)
是非の意味⑤「ある条件のもとでは必ずそうなると判断できるさま。必ず。きまって。」
「是非」の五つ目の意味は「ある条件のもとでは必ずそうなると判断できるさま。必ず。きまって。」です。
こちらも副詞で、ある物事のあとには必ずそうなることが順番づけられる、もしくは特定の条件のもとでは必ずそうなると決定づけるさまを表します。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・小事件を記述したあとには、順序として是非大事件を話さなければならん。
(出典:夏目漱石『吾輩は猫である』)
・学問性はそれ故是非方法にあらねばならない筈である。
(出典:戸坂潤『科学方法論』)
・彼の生理的運動には是非それも必要なものとなって仕舞っている。
(出典:岡本かの子『バットクラス』)
類語
・必ず(かならず)
意味:例外のないさま。きまって。いつでも。(出典:デジタル大辞泉)
・決まって(きまって)
意味:ある条件のもとでは必ずそうなるさま。(出典:デジタル大辞泉)
・何時も(いつも)
意味:いつと限定しないさま。どんな場合でも。常に。(出典:デジタル大辞泉)