陰影
「陰影が落ちる」などのように使う「陰影」という言葉。
「陰影」は、音読みで「いんえい」と読みます。
「陰影」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「陰影」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
陰影の意味
「陰影」には次の二つの意味があります。
1 光の当たらない、暗い部分。かげ。
2 物事の色・音・調子や感情などに含みや趣があること。ニュアンス。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
陰影の意味①「光の当たらない、暗い部分。かげ。」
「陰影」の一つ目の意味は「光の当たらない、暗い部分。かげ。」です。
日やライトの当たらないところを意味します。
「陰翳」という字を当てることもあり、谷崎潤一郎は随筆『陰翳礼賛』にて薄暗い明かりこそ日本の伝統美を象徴すると論じています。
具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・冷たい彫像のような男の横顔に、窓越しの光が濃い陰影を落としていた。
(出典:三雲岳斗『聖遺の天使』)
・窪んだ箇所は黒い陰影を作り、隆起している角は骨のように白く見えた。
(出典:国枝史郎『血曼陀羅紙帳武士』)
・周囲の街並みもクルマも雨霞に包まれ、急速にその陰影を失っていった。
(出典:垣根涼介『ヒート アイランド』)
・陰影を際立たせるために真っ白な紙を使用した。
類語
・暗黒(あんこく)
意味:真っ暗なこと。全く光のささないこと。くらやみ。また、そのさま。
(出典:デジタル大辞泉)
・暗闇(くらやみ)
意味: まったく光がなく、暗いこと。また、その所。(出典:デジタル大辞泉)
・闇(やみ)
意味:光のささない状態。暗いこと。(出典:デジタル大辞泉)
・暗がり(くらがり)
意味:暗いこと。また、暗い場所。くらやみ。(出典:デジタル大辞泉)
陰影の意味②「物事の色・音・調子や感情などに含みや趣があること。ニュアンス。」
「陰影」の二つ目の意味は「物事の色・音・調子や感情などに含みや趣があること。ニュアンス。」です。
比喩的な用法です。
光が当たらない部分、すなわち具体的には説明されない部分の意味から「ニュアンス」を表す意味へ転じました。
具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・しかしそれは、共同性との関わりで陰影に富んだ対立の相を見せている。
(出典:加藤典洋『敗戦後論』)
・まして人間の心情を底から掘り返したような深い鋭い精神の陰影もない。
(出典:和辻哲郎『古寺巡礼』)
・源氏には、ほかの人間にない陰影があるというのは、その過去のせいである。
(出典:田辺聖子『新源氏物語』)
・我々は我々自身の中にもヨハネに会ふ前のクリストの心の陰影を感じてゐる。
(出典:芥川竜之介『西方の人』)
類語
・微妙(びみょう)
意味:一言では言い表せないほど細かく、複雑なさま。また、きわどくてどちらとも言い切れないさま。(出典:デジタル大辞泉)
・ニュアンス
意味:言葉などの微妙な意味合い。また、言外に表された話し手の意図。(出典:デジタル大辞泉)
・機微(きび)
意味:表面だけでは知ることのできない、微妙なおもむきや事情。(出典:デジタル大辞泉)
・精微(せいち)
意味:くわしく緻密であること。また、そのさま。(出典:デジタル大辞泉)