緞帳
「緞帳が下ろされていた」などのように使う「緞帳」という言葉。
「緞帳」は、音読みで「どんちょう」と読みます。
「緞帳」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「緞帳」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
緞帳の意味
「緞帳」には次の二つの意味があります。
1 厚地の織物でつくった模様入りの布。帳(とばり)などに用いる。
2 劇場の舞台と観客席とを仕切る垂れ幕。厚地に絵や刺繍などを施した幕で、上下に開閉する。緞帳幕。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味や使い方については下記の通りです。
緞帳の意味①「厚地の織物でつくった模様入りの布。帳(とばり)などに用いる。」
「緞帳」の一つ目の意味は「厚地の織物でつくった模様入りの布。帳などに用いる。」です。
劇場などで見られる、ヒダがついている大きな幕のことをいいます。
また「絞り緞帳」や「引き割り緞帳」、「オペラカーテン」などの種類があります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・ああ、そうか、と今頃になってなぜ緞帳が下ろされていたのかがわかった。
(出典:北野勇作『人面町四丁目』)
・雲が流れてきて、一瞬、巨大な緞帳が空から下りてきたようにあたりに影を作った。
(出典:小池真理子『狂王の庭』)
・私は窓際の席にすわって緞帳のような重いカーテンを細目に開いた。
(出典:阿刀田高『自選恐怖小説集 心の旅路』)
・眼の前に黒い雲のような緞帳が下りて来て、佐野の姿が消えると妾は意識を失ってしまいました。
(出典:吉行エイスケ『バルザックの寝巻姿』)
・また、天井から緞帳のように厚い幕が不規則に下がり、室内を分割している。
(出典:有栖川有栖『ダリの繭』)
緞帳の意味②「劇場の舞台と観客席とを仕切る垂れ幕。厚地に絵や刺繍などを施した幕で、上下に開閉する。緞帳幕。」
「緞帳」の二つ目の意味は「劇場の舞台と観客席とを仕切る垂れ幕。厚地に絵や刺繍などを施した幕で、上下に開閉する。緞帳幕。」です。
歌舞伎をはじめとした舞台で目にする、物語の場面転換の際に下ろされている幕のことをいいます。
「幕を上げる」や「幕を下ろす」などの言葉は、緞帳が上下する様子からつくられた表現です。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・現にまるで幕があがるように、霧の緞帳が急速に消えはじめていたのだ。
(出典:池田満寿夫『尻出し天使』)
・桔梗座の最後の日に緞帳落としをやりましょう、と大月城吉は提案した。
(出典:皆川博子『旅芝居殺人事件』)
・その騒ぎが一段らくつくと、やがて遅れた第二幕目の緞帳が捲かれた。
(出典:江戸川乱歩『黄金仮面』)
・六時半ごろやっと呼ばれ、五人が舞台の壇上に座って緞帳が上がった。
(出典:田丸公美子『シモネッタのデカメロン イタリア的恋愛のススメ』)
・だが、どうしたことか緞帳はなかなかおりてこないのだ。
(出典:江戸川乱歩『人間豹』)