素描
「素描の練習をする」などのように使う「素描」という言葉。
「素描」は、音読みで「そびょう」と読みます。
「素描」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「素描」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
素描の意味
「素描」には次の二つの意味があります。
1 黒・セピアなどの単色の線で物の形象を表し、また陰影をつけた絵。絵画の習作や下絵として描かれる。デッサン。
2 要点を簡単にまとめて書くこと。また、その文章。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味や使い方については下記の通りです。
素描の意味①「黒・セピアなどの単色の線で物の形象を表し、また陰影をつけた絵。絵画の習作や下絵として描かれる。デッサン。」
「素描」の一つ目の意味は「黒・セピアなどの単色の線で物の形象を表し、また陰影をつけた絵。絵画の習作や下絵として描かれる。デッサン。」です。
「素」という字には「物事を作り上げるもの、本質的なもの」という意味があり、「素描」とはおおざっぱに描くことではなく、骨格・輪郭をつくる大切な作業という意味合いが含まれています。
因みに、デッサン(dessin)はフランス語です。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・しかしながら、素描と一口にいっても、その範囲は頗る広いものである。
(出典:小出楢重『油絵新技法』)
・しかし普段の彼の作品を見慣れた目には、この素描はどこか違和感がある。
(出典:三雲岳斗『旧宮殿にて』)
・その雑誌にセザンヌのいい素描や何かもあって、その柔らかさ確実さ。
(出典:宮本百合子『獄中への手紙』)
・彼の手の中には銀筆で描かれた、チェチリアの精緻な素描が完成している。
(出典:三雲岳斗『聖遺の天使』)
・私はしばしば彼の素描にこのような筆致と描写とを目撃する。
(出典:柳宗悦『工芸の道』)
素描の意味②「要点を簡単にまとめて書くこと。また、その文章。」
「素描」の二つ目の意味は「要点を簡単にまとめて書くこと。また、その文章。」です。
上記の意味①から派生して、要点をまとめるという意味合いでしばしば用いられています。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・ごく簡単にその或る側面の輪郭だけを素描しておきたいと思う。
(出典:戸坂潤『思想としての文学』)
・ニーチェの生涯のいくつかの重要な結節点を素描することからはじめよう。
(出典:竹田青嗣『ニーチェ入門』)
・現実には弱々しい糸一本が、句の世界をただ一筋で支える、素描術の妙。
(出典:大岡信『名句歌ごよみ〔夏〕』)
・彼はこの小説執筆の二十年後、「自伝素描」に次のように書いている。
(出典:ヘッセ/高橋健二訳『車輪の下』)
・にか描かれた人のもの、その他の会場で皆名を忘れたが二、三の人のものによき素描の芽を見た。
(出典:岸田劉生『想像と装飾の美』)