研ぐ
「包丁を研ぐ」などのように使う「研ぐ」という言葉。
「研ぐ」は、訓読みで「とぐ」と読みます。「磨ぐ」と表記することもできます。
「研ぐ」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「研ぐ」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
研ぐの意味
「研ぐ」には次の三つの意味があります。
1 刃物を砥石や皮でこすってよく切れるようにする。
2 米などを水の中でこするようにして洗う。
3 みがいてつやを出したり、汚れを取ったりする。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
研ぐの意味①「刃物を砥石や皮でこすってよく切れるようにする。」
「研ぐ」の一つ目の意味は「刃物を砥石や皮でこすってよく切れるようにする。」です。
言い換えると、刃を鋭利にして切れ味をよくするために、刃先を砥石などで磨くことを言います。
刀や包丁、ナイフ、はさみなど、刃物全般に対して用いることができます。
何度も使用することで丸くなり切れなくなってしまった刃先を、砥石などでこすって削り、鋭利にすることを言います。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・みんなはそれを知っているので、敵の四、五名もそのナイフを研ぎだした。
(出典:大杉栄『自叙伝』)
・オヤジさんは何度か布砥で刃を研ぎ直しては丁寧に剃りあげてくれた。
(出典:篠原勝之『骨風』)
・若しまた何か鋏でも研ぐのがありましたらそちらのほうもいたします。
(出典:宮沢賢治『チュウリップの幻術』)
類語
・磨く(みがく)
意味:物の表面を研いでなめらかにする(出典:デジタル大辞泉)
・摩する(まする)
意味:こする。みがく。(出典:デジタル大辞泉)
・尖らす(とがらす)
意味:物の先端を細く鋭くする。(出典:デジタル大辞泉)
研ぐの意味②「米などを水の中でこするようにして洗う。」
「研ぐ」の二つ目の意味は「米などを水の中でこするようにして洗う。」です。
簡単に一言で言い換えると、米を洗うことです。
ただしこの「洗う」は、米同士をこすり合わせて表面を削るように洗う、ということを意味します。
今ほど精米技術が発達していなかったころ、精米では表面の糠を落とすことができず、炊く前にこすり洗いをして糠を落とす必要があったことから、「洗う」ではなく、削り落とす意味も含む「研ぐ」と表現するようになったと言われています。
ちなみに、現代の精米技術では不要な糠はきれいに取り去られているので、米同士をこすり合わせるほど洗う必要はありません。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・時計の針が、十二時半を指すのを期して、意を決しお米を研ぎはじめた。
(出典:岸本葉子『マンション買って部屋づくり』)
・外は一面、米の研ぎ汁を流したような濃い霧である。
(出典:東郷隆『(定吉七番シリーズ 3) 角のロワイヤル』)
・この時ほど米を研ぎたいと思った事はない。
(出典:吉村萬壱『ハリガネムシ』)
類語
・洗う(あらう)
意味:水などを使って汚れを取り去る。(出典:デジタル大辞泉)
・流す(ながす)
意味:付着物を水や湯などで洗い落とす。(出典:デジタル大辞泉)
・濯ぐ/洒ぐ/滌ぐ/漱ぐ(すすぐ)
意味:汚れを水で洗い落とす。水で清める。(出典:デジタル大辞泉)
研ぐの意味③「みがいてつやを出したり、汚れを取ったりする。」
「研ぐ」の三つ目の意味は「みがいてつやを出したり、汚れを取ったりする。」です。
①の意味と似ていますが、この場合は刃物に限らず、金属や鉱石、人の身体で言えば爪などの比較的堅いものを、凹凸や汚れを削ることで落とし、表面を滑らかにして磨き上げ、つやを出すことを言います。
小説などでの具体的な使い方・例文や類語は下記の通り。
使い方・例文
・さっき鏡で自分の顔を眺めていたと思ったら、今は爪研ぎよ。
(出典:帚木蓬生『受精』)
・美しい魔女は、爪を研ぎながら、彼女のいわゆる学術的な捜査を開始したのである。
(出典:田中芳樹『薬師寺涼子の怪奇事件簿8 水妖日にご用心』)
・漆を重ね塗りし、油と砥粉で研ぎあげた屋根が雨を弾き飛ばしている。
(出典:山本一力『損料屋喜八郎始末控え』)
類語
・刮げる(こそげる)
意味:物の表面を削る。付着物を削り落とす。(出典:デジタル大辞泉)
・剝ぐ/折ぐ(へぐ)
意味:薄く削りとる。また、はがす。はぐ。(出典:デジタル大辞泉)
・削ぎ取る(そぎとる)
意味:削いで取る。けずりとる。(出典:デジタル大辞泉)