施す
「処置を施す」などのように使う「施す」という言葉。
「施す」は、訓読みで「ほどこす」と読みます。
「施す」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「施す」の意味や使い方について、小説などの用例を紹介しながら、わかりやすく解説していきます。
施すの意味
「施す」には次の四つの意味があります。
1 恵まれない人に物質的な援助を与える。あわれみの気持ちで、人が困っている状態を助けるような行為をする。恵み与える。
2 飾りや補いのために何かを付け加える。
3 効果・影響を期待して、事を行う。
4 事態を改善するようなことを行う。(出典:デジタル大辞泉)
「施す」には他の意味もありますが、上記の意味で使われることがほとんどです。
それぞれの意味や使い方については下記の通りです。
施すの意味①「恵まれない人に物質的な援助を与える。あわれみの気持ちで、人が困っている状態を助けるような行為をする。恵み与える。」
「施す」の一つ目の意味は「恵まれない人に物質的な援助を与える。あわれみの気持ちで、人が困っている状態を助けるような行為をする。恵み与える。」です。
例えば、「子供にパンを施す」で「食べる物がない子供を哀れみ、助けるためにパンを与える」という意味になります。他にも、「治療を施す」という使い方をします。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・一生のうちで彼は一人の不幸な人にも施しをしたことがなかった。
(出典:ユゴー・ヴィクトル『レ・ミゼラブル』)
・A自身も自分にそのような手術が施されていることに気づいていない。
(出典:竹本健治『匣の中の失楽』)
・すぐにも、この極度の衰弱状態に必要な手当を施してやらねばならない。
(出典:ヴェルヌ/大友徳明訳『地の果ての燈台』)
施すの意味②「飾りや補いのために何かを付け加える。」
「施す」の二つ目の意味は「飾りや補いのために何かを付け加える。」です。
この「施す」をわかりやすく説明すると、「飾りを付け加える」、「足りないものを補うために何かを付け加える」という意味があります。例えば、「化粧を施す」や「皿に彫刻を施す」はこの意味で使われています。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・女の肌のように白い背中には、一という字の刺青が施されているのだ。
(出典:織田作之助『競馬』)
・トゥプリングは寺院の入口のアーチの下の彫刻を施した石の上に座った。
(出典:J・ブリッシュ『スター・トレックTV版(全12巻) 3 地球上陸命令』)
・迷彩を施された機は全身に殺気を塗したような獰猛な気配に満ちている。
(出典:森村誠一『ミッドウェイ』)
施すの意味③「効果・影響を期待して、事を行う。」
「施す」の三つ目の意味は「効果・影響を期待して、事を行う。」です。
例えば、「人形に仕掛けを施す」で「ある効果を期待して人形に仕掛けをする」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・大機をつかみ、大策を施すも、そのわずかな間にのみ限られておるのだ。
(出典:吉川英治『新書太閤記』)
・よく見れば、ここにはなかなか見事な防御策が多く施されている。
(出典:上橋菜穂子『鹿の王 上』)
・セオリー通りならこの先はもっと心臓に悪い仕掛けが施されているはず。
(出典:鈴木大輔『ご愁傷さまニノ宮くん 4』)
施すの意味④「事態を改善するようなことを行う。」
「施す」の四つ目の意味は「事態を改善するようなことを行う。」です。
例えば、「崩れかかった崖の手前に柵を施す」で「崩れかかった崖の手前に安全のため、柵を設置する」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方は下記の通り。
使い方・例文
・手の施しようがない状態だった、というのがその刑事からの報告だった。
(出典:五十嵐貴久『土井徹先生の診療事件簿』)
・記録にあるどんな雨量に達しても充分支え切れるだけの工事が施されていた。
(出典:半村良『軍靴の響き』)
・だが案に相違して、防水のことはほとんど何も施されてはいなかった。
(出典:酒見賢一『童貞』)