夥しい
「夥しい数の死体」などのように使う「夥しい」という言葉。
「夥しい」は、訓読みで「おびただしい」と読みます。
「夥しい」とは、どのような意味の言葉でしょうか?
この記事では「夥しい」の意味や使い方や類語について、小説などの用例を紹介して、わかりやすく解説していきます。
夥しいの意味
「夥しい」には次の二つの意味があります。
1 数や量が非常に多い。ものすごい。
2 程度がはなはだしい。ひどい。激しい。(出典:デジタル大辞泉)
それぞれの意味、使い方、類語については下記の通りです。
夥しいの意味①「数や量が非常に多い。ものすごい。」
「夥しい」の一つ目の意味は「数や量が非常に多い。ものすごい。」です。
「夥しい人でごった返している」で、「非常に多くの人々で混雑している」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方や類語は下記の通り。
使い方・例文
・夫は自分が吐いた夥しい血の中に、顔を埋めて倒れていた。
(出典:小池真理子『ひるの幻 よるの夢』)
・ならばその夥しい水の量こそが海を海たらしめていると云うことだろうか。
(出典:京極夏彦『狂骨の夢』)
・赤い屋根が竹細工のようにたわみ、夥しい数の瓦を宙に投げあげていた。
(出典:山田正紀『謀殺のチェス・ゲーム』)
・戦後になって世間に夥しいダイヤが出た事実は、どう説明したらよいか。
(出典:松本清張『日本の黒い霧(下)』)
類語
・多数(たすう)
意味:物の数や人数の多いこと。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・大量(たいりょう)
意味:分量が多いこと。たくさんなこと。また、そのさま。多量。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・莫大(ばくだい)
意味:程度や数量がきわめて大きいさま。(出典:デジタル大辞泉)
・沢山(たくさん)
意味:数量の多いこと。また、そのさま。(出典:デジタル大辞泉)
夥しいの意味②「程度がはなはだしい。ひどい。激しい。」
「夥しい」の二つ目の意味は「程度がはなはだしい。ひどい。激しい。」です。
「だらしのないこと夥しい」で、「非常にだらしがない」という意味になります。
小説などでの具体的な使い方や類語は下記の通り。
使い方・例文
・この親切な少女に対してまったく不誠実なこと夥しい。
(出典:川原礫『ソードアート・オンライン 第5巻』)
・一風変った美術的な時計だから音も澄み渡って美しいこと夥しい。
(出典:谷崎潤一郎/種村季弘編『美食倶楽部 谷崎潤一郎大正作品集』)
・こんな心持で文学上の製作に従事するから捗のゆかんこと夥しい。
(出典:二葉亭四迷『予が半生の懺悔』)
・民衆はその惨苦な生活で実に夥しい才能、善良さを浪費させられているのである。
(出典:宮本百合子『逝けるマクシム・ゴーリキイ』)
類語
・酷い(ひどい)
意味:程度が非常に悪い。(出典:デジタル大辞泉)
・非常(ひじょう)
意味:並の程度でないさま。はなはだしいさま。(出典:デジタル大辞泉)
・甚大(じんだい)
意味:物事の程度がはなはだしく大きいこと。(出典:精選版 日本国語大辞典)
・すごい
意味:びっくりするほど程度がはなはだしい。並外れている。(出典:デジタル大辞泉)